■還暦を迎えて−日本モンキーセンターの未来−



 本年10月17日、日本モンキーセンター(JMC)は還暦を迎えました。 1956年当時、第二次世界大戦後の混乱が落ち着き始めた頃、日本の霊長類学の創始者である京都大学の故今西錦司、河合雅雄、故伊谷純一郎らと 東大の霊長類実験研究グループが連携し、彼らの強い熱意と名古屋鉄道株式会社(名鉄)の英断による快挙といっても過言ではないでしょう。 当時としては希有な産学連携事業です。財団の初代会長は第16代日本銀行総裁や幣原内閣で第49代の大蔵大臣を歴任した民俗学者の渋沢敬三、 理事長は日本の国立公園制度を確立した林学者の田村剛というそうそうたる顔ぶれでした。

 翌1957年、JMCは愛知県登録第2号となる博物館登録の認可を受け、国内で唯一の「博物館登録された動物園」になりました。 財団として博物館登録されたことはモンキーセンターの礎になっていますし、それを実現したことは創設者たちの先見の明をうかがえます。 あくまでも研究機関として、他の動物園とは異なる独自の存在になることを意識していたのでしょう。

 実は、あまり公言してこなかったのですが、私は1957年にこの犬山の栗栖で生を受けました。 栗栖はJMCが研究所として最初に設置された地です。私は5歳頃までしか犬山にいなかったのですが、当時は住宅も少なく、 丘の上に小さな建物がポツンと建っていただけのように記憶しています。周囲には農地が広がり、自然も豊かで、 近くの川で魚をつかんだり、森で虫取りをしたりして野山を駆けまわっていました。

60年という月日は、自然環境や社会環境を大きく変容させるのに十分な時間で、それに伴ってJMCの体制や運営も紆余曲折してきました。 ここに至って、JMCには新たな船出が求められたのです。2014年4月、JMCは遊園地との複合経営によってレクリエーションに傾いていた運営方針を立て直し、 国内唯一の登録博物館である動物園として「学術・教育・文化」の発展に貢献することを目的とする、公益財団法人として再出発することになったのです。 そして、その最初の動物園長を私が拝命しました。犬山を去って50年余り、よもや私がこの地に戻ってくることになるとは予想もしていませんでした。

執行部は、理事長に尾池和夫(京都造形芸術大学学長、元京都大学総長)、常任理事として所長に松沢哲郎(京都大学特別教授)、 博物館長に山極壽一(京都大学総長)、動物園長/事務局長に伊谷原一(京都大学教授)というオール京大という陣容でスタートしたのです。 これは京都大学によるJMCの運営を意味しているわけではありませんが、おそらく日本初、世界でも希有な大学教員による動物園経営の事例でしょう。



 現在、JMCには64種・920個体の霊長類が飼育されています。これは霊長類に関して世界最大のコレクションであり、 まさに「世界サル類動物園」といわれる所以です。その一方で、コンクリートと金網で仕切った檻が並ぶモンキーアパートやコンクリートのサル山など、 近代動物園としてとても胸を張ることのできない施設も目立ちます。また、ほとんどの施設・設備が建設・設置後30年以上経過しており、 水道管が破裂したり電源が落ちたり、さらには動物が逃亡する危険性が生じるものなどが少なくありません。

今後、改修やリニューアルは避けては通れない道でしょう。サルたちの生活、来園者の満足度、そして飼育作業性という3つの異なる要素をカバーできる、 長期展望に立った施設へのリニューアルが求められます。また、博物館として多様な仕掛けを施した教育効果の高い展示開発も必須でしょう。 しかし、ハード面の改修には膨大な費用を要し、公益財団法人であるがゆえに収益事業を優先させることができないことため、 まとまった資金を調達することは容易ではありません。寄付の拡大、集客とリピーター確保、会員の拡大、イベント開催、他機関との連携など、 多様な事業を展開しなければならないでしょう。逆に、施設改修を進めることで話題性や宣伝効果を高め、それが集客に結びつくことになるのかもしれません。

60周年を迎え、公益財団法人化して3年目に突入したJMCは、大きな改革の岐路に立っています。「生きた動物博物館」を目指し、 新たな挑戦を敢行することこそが、JMCの生き残る唯一の途なのかもしれません。
『霊長類研究』Vol. 32「日本モンキーセンターの再生」を一部引用


2016年10月17日

公益財団法人日本モンキーセンター動物園長
伊谷原一


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※日本の動物園等で飼育されている霊長類の種数は102種類です。(2015年3月31日時点、GAIN調べ。種間雑種その他の分類不明なものは除く。)
公益財団法人 日本モンキーセンター
〒484-0081 愛知県犬山市犬山官林26番地 TEL:0568-61-2327 FAX:0568-62-6823
動物取扱業:公益財団法人日本モンキーセンター 愛知県犬山市大字犬山字官林26番地
業種:展示 動尾第510号 業種:貸出し 動尾第509号 登録:平成19年5月31日 有効:平成34年5月30日 取扱責任者:木村直人