おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。




「春真っ盛りのリスザルの島へ」



ボリビアリスザルは南米のジャングルに棲息するサルです。日本モンキーセンターでは、園内のリスザルの島で長年群れ飼育をしてきました。犬山生まれのサルたちですので当地の気候にもよく慣れています。雪が降っても屋外に出て縄張りの巡回に余念がありません。

しかし、今年はいつになく厳しい冬でしたのでさすがの彼らも暖房小屋から出ようとせず、1月、2月は一頭も姿をみせない時間帯がたびたび見受けられました。出て来たときも濡れて冷え切った地面を避けて足早に枝を伝って移動していました。氷点下の朝が続いたことから、園内の池の水が凍ったり、水道管が破裂したりするのですから致し方ありません。

3月に入ってやっといつものペースがもどってきました。写真のように陽光春らしく、風のない日はゆったりとたたずむ様子が観察されています。二十四節気のひとつ啓蟄(けいちつ)は、「冬ごもりから目覚めた生き物が、 穴を開けて顔を出すころ」とされています。虫嫌いな方や街暮らしをされてみえる方にはあまり興味が湧かない用語かもしれませんが、虫が大好物なリスザルたちにとってはもしかすると1年で一番待ち遠しい季節かもしれません。厳冬期には避けていた地面に降り立ち、積もった落ち葉をしきりに指でひっくり返すようになります。中には虫探しに疲れて、そのまま地面で居眠りをはじめるお年寄りもいます。

リスザルの島は、周囲を池で囲った島内には自然木が繁っており、お客様がサルの棲むエリアに立ち入る構造になっています。自然の中での四季折々のリスザルの暮らしぶりを是非いちど体感してみてください。


 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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