おさる獣医師の動物園歳時記<カニクイザルの山・夏至編>

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」<カニクイザルの山・夏至編>です


 
vet~03jul.jpg - 178,989Bytes

新施設「カニクイザルの山」で遊ぶカニクイザルの子どもは、
緑豊かな施設内で木渡りに夢中。
<2003年6月撮影>
 
 
この地方では夏至は梅雨時に訪れます。このため「夏至の深曇り」とよまれる様に、
昼の長さを実感できないまま、なんとなく過ぎていくものという印象がありました。
今年は環境省やNPOらの働きかけで主要施設におけるライトダウンが
全国的に展開されたこともあって例年と違う季節の節目となったようです。

また、今年の夏至の夜空に月はなく、暗闇の演出には効果的でした。
「スローな時代」をキーワードに夜をゆっくりとすごす流行があり、最近では
月の周期や「月暦」への関心が高まっています。

 そんな関心事の中に「出産は潮が満ちる時に…」という言い伝えがあり、
本当に大潮(新月か満月前後)に多いものか、モンキーセンターにある
五つの放し飼い施設の中で、最も野趣あふれる生活をおくっている
「カニクイザルの山」(写真)で調べてみることにしました。

昨年度(平成14年度)の出産数は十五頭で、
大潮前後の五日間に生れた子どもは八頭でした。
およそ三分の一の期間に五割強の子どもが生まれたことになり、
まんざらその傾向がなくもありません。

 私達人間にも体内時計が存在し、月の周期に近いサイクルで動いています。
時にはライトを消して、動物園のカニクイザルのように月明かりで
生活するのも良いのかもしれません。

自然の木々が残る「カニクイザルの山」では大潮生れの子ども達が
今日も元気に遊んでいます。
 

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


よもやま話へ戻る