おさる獣医師の動物園歳時記【 クモザルの双子すくすく編 】

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」< クモザルの双子すくすく編 >です


 
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「クモザルの島」で生れたジェフロイクモザルの双子の赤ちゃんは
緑豊かな施設内でおかあさんといっしょ
<2003年8月撮影>
 
  天候不順の夏でしたがセンターのサルたちは大病もせず、元気に乗りきってくれました。
  クモザルの島で7月5日に生れた双子の赤ちゃんもなんとか大きくなってきているようです。
 
クモザルの双子の出産は珍しく、
モンキーセンターのクモザル飼育歴40年の中でも
たった3例しかありません。
生育も困難が伴い、内一例は1頭しか育っていません。
 
双子ちゃんは、出生体重が小さく、
生後かかりやすいとされる肺炎などへの抵抗力も劣っていたと思われます。

今年は特に季節はずれの台風も連日の降雨も心配材料となりました。

 もう一つ気がかりなことがあります。
どうも双子のお母さんへの抱かれ方がいつも同じように思えることです。
向かって右側の赤ちゃんは比較的目を覚ましてきょろきょろしていることが多く、
左側の赤ちゃんは眠っている時間が多いようです。

お母さんは出産経験が豊富ですが、左右の乳房から同じように
おっぱいが出ているのかどうかを確認することはできません。

 園内のお客様にクモザルの島でガイドをしますと、
双子の赤ちゃんからは星座の「ふたご座」を連想される方が多くおみえになります。

ふたご座の名前の由来になっている双子星は「悲劇のヒーロー」ですので、
お話している私には少し複雑な気持ちがいたしました。

このクモザルの赤ちゃんたちには冬の星座、ふたご座を
二頭揃って見上げてほしいと願っています。

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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