【アジカンInfo】~ヨウの哺育録②~

フランソワルトンのヨウを哺育するようになって母性が目覚めたのか、小さなお子様を見るだけで微笑んで涙管が崩壊してしまう坂口です。※どなたでも、ご覧いただけます

母親が育児放棄した場合に、私たち飼育スタッフが親代わりになることを「人工哺育」といいます。

過去の人工哺育は、哺育ノートが残されており、ノウハウが詰まっています。ある程度のハプニングには、対応ができます。

でも、リーフイーター(ルトン・コロブス類)の成功例は過去に一度もありません。胃袋が3室ほどに分かれているリーフイーターですので、正解の人工哺育方法が確立できていないのが現状です。

昨年8月13日に生まれたフランソワルトン♂️ヨウは、育児放棄され人工哺育になりました。

来月で1歳の誕生日を迎えます。今でも成長不良、未成熟の不安があります。でも、とても元気があり、徐々にですが成長しています。

今回は、生後2ヶ月までの話を少しだけ紹介します。

8月13日の朝、フランソワルトンの運動場に小さな元気の良い声が響いていました。

側溝にヨウが挟まって鳴いていました。母親のニィと父親のライムは、ヨウに見向きもしません。

このままではヨウが低体温になるので、一旦取り上げて、体調の確認を獣医としました。ヘソの緒を切ってもらい体重を計り、ケガ等してないか確認しました。

まだ母親が育てる可能性があるか、室内にタオルを敷いて親たちと同じ空間に置いて様子を見ました。

母親たちは一切ヨウを抱こうとはしませんでした。体温が下がるので、30分くらいでヨウを収容し保温して、同室お見合いを数回繰り返しました。

元気に母たちを呼ぶヨウですが、親たちは少しだけ近付いて見るだけでしたので、育児放棄と判断し人工哺育に切り替えました。

何がルトンの哺育の正解か、分からないので手探りで進めました。

色々なハプニングが起きました。その都度、担当で話し合い試行錯誤して乗り切りました。

私たちが哺育に寄り添っていると、アジアの通常作業が進まないので、他の飼育班からも作業フォローをいただきました。すごくありがたかったです。

毎日、ヒヤヒヤしながら哺育しました。連日のことを書きたいですが、止まらなくなってしまうので、簡潔にお伝えします。

とにかく最初は便が緩く、どーやったら硬めな良便になるか悩みました。

良便が出たときは、すごく嬉しくなりました。

ミルクの摂取量か間隔か、濃度の違いかとかノートを見直します。直ぐに、また便が崩れたり、直ぐに顔色が悪くなって死にそうになったり。

何が問題なのか、情報共有して探りました。温度なのか、安心感なのか、全く分からず悩みます。

一番の危機は、お腹の張りでした。日に日にパンパンになるお腹。マッサージして、便は出て、オナラも出ます。でも、お腹はパンパン。

獣医に診察していただき、腹腔内に空気が溜まっているとレントゲンで分かりました。

腹腔内から空気を抜くのは、小さい体には危険な処置です。覚悟を決めて処置をしました。

腹部の毛を剃り、空気を抜きました。ヨウは元気になり、便も良便が続くようになりました。

次に悩んだのは、ミルクを哺乳瓶で飲まなくなりました。ゴムの乳首が悪いのか、吸うのが嫌なのか分かりません。でも、栄養は接種して欲しいので、マーモセットとか小型ザルと同じようにシリンジ(注射器)で飲ませるようになりました。

体重が増えないので、3~4時間おきの授乳が続きました。体重が増えないのはミルクの濃さかも知れないと考え、分量調整を行いました。

お腹に毛がないので、タオルや寝床の工夫をしてお腹の冷え対策をしました。でも、すぐに鼻水だしたりして、心配がつきません。

消化器官が他のサルたちと違いがあるので、便の状態が本当に心配です。体重は徐々にですが増えていき、ヒヤヒヤの連続ですが何とか2ヶ月を乗り切ろうとしていました。

獣医と連携し話し合い「明日へ命を繋げる」哺育を目標に、担当者で頑張ろうと誓いました。

~哺育③につづく~

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