おさる獣医師の動物園歳時記
【 ワオキツネザルのそろそろ乳離れ? 編 】
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です

本格的な秋を迎え、動物園ではケヤキやサクラの葉が色づいてきました。
秋は、春生まれの多くのサル達にとって、乳離れ前の大事な準備期間でもあります。
ワオキツネザルの施設としてこの春オープンした「Wao(ワオ)ランド」では、3頭の
赤ちゃんが生まれました。生後半年が過ぎた今の様子をお話しましょう。
Waoの子どもは、体格的にはまだ小ぶりですが、運動能力はオトナとほとんど
かわらないほどに発達し、ランド内のデッキや植栽の間をピョンピョン飛び回って
います。また、ワオキツネザルの特徴の一つである両手を広げた日向ぼっこのポーズも
一人前にできるようになりました。

母親のそばから離れ歩くことが多くなるこの時期には、突拍子もない動きを見せる
こともありますので、怪我でもしないかとひやひやさせられます。そんな時母親はと
いうと、それほど気に掛けることもないようで「放任型育児」に徹しています。
ただ、ミルクをせがんでオッパイを吸いにくるコドモに対しては、ペロペロ舐める
きめ細やかな毛繕いで応えています。

文献上、離乳期は生後3ヶ月半くらいとされています。しかし今も母親のオッパイは
しっかりと張っていて、実際に乳首を吸いにいっていますので、離乳はずいぶん遅れて
いるようです。生育が順調ならば、マニュアルにとらわれず、自然にまかせた
乳離れでよいのではないかと考えています。
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。