おさる獣医師の動物園歳時記
【 「イヌヒヒ」に会いに来て! 編 】
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です

いよいよ今年もあと残すところわずかとなりました。来年は戌年です。
動物園には「イヌヒヒ」とも呼ばれる人気者のサルがいます。
そのサルの名は「ドグエラヒヒ」(写真)。
学名や体色、生息域から「アヌビスヒヒ」「オリーブヒヒ」
「サバンナヒヒ」と欧米ではいろいろな名で呼ばれていますが、
サルの中で比較的大型、四足歩行の地上生活者、鼻先が長くて、
「ワン」と鳴く(ように聞こえる!?)といった特徴があります。
「ドグエラ」とは、「犬に似た」という意味があるので、
よく特徴をとらえた呼び名だと思います。

大人の体毛は、写真のように黒味がかった淡いオリーブ色です。
1本1本を見ると、根元が褐色でオリーブ色と黒色のまだら状となって
います。露出した皮膚は黒色です。一方、赤ちゃんの時には体毛は黒一色で、
皮膚は肌色。このため群れの中で比較的容易にさがすことができます。
現在、よちよち歩きの赤ちゃんもいますので、見ていて飽きません。
この赤ちゃんは、群れの緊張を解きほぐす役目も担っていて、争った大人の
オス同士が赤ちゃんを抱いた母子を挟んで仲直りをしている光景も観察できます。

時には、この写真のように大人オスが赤ちゃんを抱きかかえることもあります。
母親や赤ちゃん本人はあまり喜んではいないように見えますが、
こうした緊張緩和策がもともと備わっているのでしょうね。
今年は「愛・地球博」が開催され、自然を考える年でした。
同時に小さな子どもにまつわる悲惨な事件が続発した年でもありました。
来年は豊かな自然の中、子ども達がより安心して元気にすごせる年になるといいですね。
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。