おさる獣医師の動物園歳時記
  いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です


 平成18年9月16日、動物園に新施設「モンキースクランブル」がオープンしました。
この施設は、最大地上高およそ15メートル、総延長およそ
300メートルの巨大雲梯とつり橋、
自然の木々が生い茂るサル島の3つの施
設から構成されており、
森で暮すサルが持つ脅威の運動能力を間近で楽しく学
ぶことができます。



 ここで飼育するのは、テナガザルの中でも大型で
見上げるように高い雲梯を
恐がることなく飛び渡る「フクロテナガザル」、
のんびりと長いつり橋を渡り
歩き、時々シッポを使って
上手にぶら下がる「ジェフロイクモザル」、
愛らし
くてかわいい「ボリビアリスザル」の3種です。

 今までの施設では、これらのサル達はそれぞれ別個の施設で暮していました。
新施設では、テナガザルの巨大雲梯がクモザルの島を跨ぎ、
クモザルの長
いつり橋がリスザルの島のすぐそばまで伸びています。
これによってそれぞれ
のサル達が、お互いに影響しあいながら
生活する姿を見られるようになりまし
た。
クモザルが動けば、テナガザルが興味を示して枝渡りを始め、
リスザルは
近づいてくるクモザルを警戒して
集団で鳴きながら木々の中から出てきます。
クモザルのオスには、縄張りを見回る習性がありますので、
日に何度もつり橋
の先まで偵察に出かけて行きます。
実は、お客様もサル達にとっては興味の対
象となっており、
ここはまさに、脅威の運動能力とユニークな個性を持ったサ
ル達と
ヒトが行き来する「スクランブル」なのです。

サルとヒトとを遮るオリはありません。
頭の上を行き交うサルとの間で同じ
空間を共有するという
不思議なひと時をぜひ一度体験してみてください。

 


この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。