おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です
「冬季出産」
「定年で/お世話になった/恩師去る/思い出桜/守り引継ぐ」2007年
3月も最終週です。
暖冬の2月27日、「ジェフロイクモザル」の「フォー」という名のサル
が、1頭の赤ちゃんを出産しました。頭胴長約20センチ、尾長約20セン
チ、推定体重400グラムの元気な赤ちゃんです。暖かい日々が続いておりま
したので、まずはホッと一安心。寒くて風が出ると、調節機能が未熟で、質量
が小さな赤ちゃんの体温が奪われ、消耗しやすくなります。
その後、フォーは、暖かな日差しの中で、赤ちゃんをゆったり抱いて過ごし
ました。母子の状態も良く、性別がメスであることも確認できました。
その赤ちゃんを「フラワー」と名付けて見守っておりましたが、3月6日か
らの寒気により、気を揉む日々に逆戻り。季節外れの降雪にもみまわれ、
フォーは寒さを避けて子をしっかり抱えこみ、仲間と寄り添い過ごしていました。
このクモザルのように、熱帯原産のサルたちは、現地では寒い冬を知りません。
動物園のサルはというと、日本の気候に馴化して、冬の寒さに適応します。
出産についても、四季のない国に棲むサルの多くははっきりした出産期と
いうものをもちませんが、日本の気候に合わせて、条件の良い春に産む傾向が
みられます。ただフォーのように例外もあって、年に何頭かは冬季に出産しま
す。「もう少し暖かくなってから産んでくれればいいのに…」飼育係の多くは
そう思っています。
桜咲く春を迎え、赤ちゃんザルをより観察しやすくなります。かわいい成長
の様子をぜひ見に来て下さい。ビジターセンターでは、
特別展「みんなの知らない動物園のおしごと」も始まっています。
獣医師のお仕事紹介もあります。 こちらもどうぞお見逃しなく!。
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。