おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 

 バレンタインにホワイトデーと仲良しさんにとっては、なにかと多忙な季節を迎えています。当園にも気分華やぐカップルがたくさん訪れ、賑いをみせています。各地の動物園では昔から、カップルにまつわる「都市伝説」がいろいろと残されていますが、ここで一つご紹介しましょう。
 登場するサルは、南米原産の「ダスキーティティ」です(写真)。体長約35センチ、尾の長さはこれより長く45センチほどあります。オマキザルの仲間に分類されていますが、代表的なオマキザルのように尾でぶら下がったり、物をつかんだりはできません。その代わり、この写真のように仲良し同士で尾を絡めて休息します。ふさふさした毛で覆われていますので写真では大きく見えますが、体重1キロほどのかわいらしいサルです。
 「尾を絡めているサルを見たカップルは結ばれる」というのが、モンキー版の都市伝説なのだそうです。仲良しカップルがこのサルの前で、なにげない会話をしていたところ、ダスキーティティが2頭、音もなく寄り添ってシッポを絡めたことがあったそうで、その場の空気が和み、良い雰囲気を醸し出したようです。披露宴でなりそめを紹介するスライドショーを企画したカップルが、シッポを絡めたティティの写真を使いたいからと、プロポーズをした思い出の場所に再来園、カメラを構えている場に出会ったことがあります。(写真にマウスを当てると絵が変わります)
 ダスキーティティのこの休息姿勢は、周辺が落ち着いており静かで、サル自身も十分にリラックスしている時にしか見ることができません。デート中の仲良しカップルにとっても、落ち着いた良い雰囲気の空間であったのだろうと思われます。一度試してみて下さい。(2008年2月20日)


この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。