おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 


今日は子どもの日、クロミミマーモセットの子ども
「サラ」をご紹介しましょう。

サラは1月13日生まれの男の子です。
生まれた時に母親「サリー」はサラを抱くことができずに
人工哺育となりました。出生時の体重は26.2グラム
(これでも標準体重です)。
それから間もなく4カ月、見違えるほどに生育し
今では120グラム程になっています。

人工哺育とは、動物の母親に代わって
飼育員がミルクを与え育てることをいいます。
1日あたりの授乳回数はサラの場合、
出生から1週間は8回、
その後は1カ月令まで6回、
その後は離乳食を併用して4回としました。

最初の授乳量は1回あたり0.5ミリリットル!。

細い1ミリリットル注射器を哺乳瓶として、
さらに細いチューブを乳首の代わりとしました。
乳首といってもくわえて吸うようなものではなく、
チューブの先からミルクを1滴づつ垂らすように押し出し、
それをサラの舌が舐めとるようにして飲ませていきます。



一つ誤るとミルクが気管や肺に入ってしまい
命が危うくなってしまいますので
担当の飼育員は眠い目をこすりながら
神経を集中しなくてはなりませんでした。
1か月を過ぎたころには
1回の授乳で3ミリリットル以上飲むようになりました。

その後はだんだんと親と同じ食事を食べられるように訓練し、
今ではほぼ同じメニューとなっています。
先月からは、骨の成長を助けるために
屋外で運動と日光浴をさせています。

暖かい日には園内で元気なサラに
会っていただけるかもしれません。
サラ以外にもたくさんの赤ちゃんが生れています。
かわいい姿をどうぞ見に来てください。
また、
「飼育の部屋」にも担当した飼育員の関連記事があります。
こちらもチェックしてみてください。

(2010.05.05.)
木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)



この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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