まだまだ暑い日が続きますが、いかがおすごしでしょうか。
この夏、100歳を超えた高齢者が実は既に亡くなっていた?
といった記事が新聞各紙に次々掲載され、ぞっとしました。
動物園では人の戸籍に当たる登録台帳などで個体の
経歴を記録しております。特に治療歴の多い老齢のサルの
飼育記録には、担当者の記入が膨大なものになります。
この飼育記録はセンター公式のものですので、飼育員が個人で持つ
フィールドノートには日々のサルの様子が
もっとたくさん、もっと詳しく残されていきます。
今回は敬老の日も近いので、読者のみなさんに動物園でのんびり
暮らす老猿と飼育員の絆を紹介できればと思い筆をとりました。
お年寄りのサルの健康を支えるのは、そこで働く飼育員たちです。
特にこの「ユズ」を担当している3名の飼育員はすべて女性。 そして文中最後に出てくる合言葉のくだりは
もちろん「実話」です。では・・・。
ベニガオザルとニホンザルは同じ仲間のサルです。
ベニガオザルは英名で「切り株しっぽ」
と呼ばれるようにニホンザル同様短い尾を持っています。 顔が赤いのも似ていますが、ベニガオザルでは顔の一部に 黒色の色素沈着がみられるのが普通です。 体毛はニホンザルの茶色よりも濃く黒褐色です。 今日ご紹介する仲間はベニガオザルの雌「ユズ」です
 85年9月28日に来園しましたので間もなく25周年。 来園時の記録では「成獣」となっていますので、 推定年齢で31歳を超えています。
手元の文献ではベニガオザルの長寿記録は30歳となっていますので、 記録的なご長寿であることは間違いありません。 本来の(彼女の若い頃もそうでしたが)黒褐色の体毛は 今ではロマンスグレイに変身しています。 しかし毛艶は良好で若干緩んだ肌もとてもきれいです。
長寿の秘訣は10歳以上若い雄との同居による精神面がひとつ、 そして担当する女性飼育員のケアも重要なポイントです。 季節の変わり目、特に秋冬期には体調を崩しがちですが
「なんとかこの冬」「なんとかひと冬」 を合言葉にユズも飼育員も頑張ってくれています。 (2010.09.08) 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)
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