おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
今日は太陽の大地アフリカに広く生息するヒヒの仲間、アヌビスヒヒの不思議をご紹介します。まずはこの分布域の広さですが、環境適応能力が非常に高く、熱帯雨林からサバンナそして高地だってOKというすごさ。断崖絶壁で夜を過ごすこともあるようで、よく落ちないものだと感心させられます。当園の飼育施設「ヒヒの城」でも高さ4mほどの櫓(やぐら)のてっぺんに座り、夜も休んでいます。 |
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そこで、そんなに長く座って疲れないのか?ですが、お尻にはちょうど人が腰掛けに腰掛けた時に座面に触れる硬い部分(坐骨結節(ざこつけっせつ)といいます)に「尻ダコ」と呼ばれる硬い突起があり、ここに体重を掛けている限りは痛さを感じたり、血行不良を起こしたりはしない仕組みです。お尻の腫れは病気ですか?ともよく聞かれますが、これはメスの「性皮(せいひ)」と呼ばれる部分で、発情周期にあわせて変化し、排卵時には大きく腫れます。一種のセックス・アピールですからヒヒの世界では「よくモテる」証かもしれません。運動量の多いサルですので、当園でも集団でよく走りよく歩きます。なぜか反時計回りであることが多く、これはトラック競技と同じくスポーツ医科学に適ったことなのかもしれません。ヒヒの中でも性格はおっとり穏やかな方ですがこの理由は?よくわかりません。ヒヒの城で長時間過ごされるお客様からは、「癒された」という感想も聞きますので、どうぞお訪ねください。(2011.11.16) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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