おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
 今日ご紹介するヒゲサキは南米アマゾン川流域に棲息するオマキザル科の仲間です。ヒゲサキ類にはこのヒゲサキとハナジロヒゲサキの2種がいますが、いずれも生態等不明の点が多く、南米のサルの中でもっとも知られていないサルの一つとされています。国内で飼育する動物園は少なく、日本平動物園、東山動物園、福岡県の大牟田市動物園の3園しかありませんでした。この度春からの特別展「アマゾンの光と影」を開催するのにあわせて、日本平動物園からオスを、東山動物園からメスをそれぞれ導入しました。当園での飼育は初めてとなります。飼育を始めるにあたり、飼育担当者を飼育園へ派遣し、飼育環境や給餌法、移動予定のサルの性格などを調査しました。来園展示から40日が過ぎようとしていますが2頭の相性は良く、お互いリラックスして毛繕いをするなど順調に経緯しています。このサルの特徴は名前のとおりもみ上げから続く立派な顎髭です。

            

19世紀の偉人を思い浮かべる方もあるかもしれません。真ん中分けのヘアスタイルと相まって独特な雰囲気を醸し出しています。国内での飼育頭数も少ない状況にはありますが、元々は10から30頭の群れで暮らすサルです。たくさん殖えて集団で飼育展示できることを願っています。それまでには謎とされていた生態や生理もいろいろと判ってくることでしょう。
 特別展では世界一の大河に寄り添って生きる生物にスポットを当ててご紹介しています。この貴重なヒゲサキもそうですが、ヘラクレスオオカブトムシやフタユビナマケモノなど、不思議なアマゾンの生きものにぜひ会いに来て下さい。(2013.05.01)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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