おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 

 今日ご紹介するのはベトナム北東部やラオス、中国の一部に生息するリーフモンキー(葉っぱが主食の木の葉サル)、フランソワルトンです。
 フランソワは19世紀に中国で初めてこのサルを記録したフランス領事の名から、ルトンはマレーやインドネシアで木の葉ザルをさす言葉とされています。お洒落なのは名前だけではありません。容姿も大変美しく、黒基調のきれいな体毛に覆われ、頬の白いラインがアクセントとなっています。頭頂部にすっと伸び立った毛と、長い尾がなおさらスマートさを演出しています。
 このルトンに昨年7月、日本モンキーセンターでは9年ぶりとなる出産がありました。国内で飼育している動物園は少なく、当園を含めて3園協働の繁殖プロジェクトとなりました。待望の赤ちゃんの名は「ウイ」女の子です。

              

 リーフモンキー、特にルトンは赤ちゃんの毛の色が親と大きく異なります。まだ尾の部分に一部面影が残っていますが、ウイも生まれた時には全身きれいなオレンジ色をしていました。
 さらに体内でもダイナミックな変化が起きています。新生児期は口にするのは母乳だけですので、葉を消化する胃の構造になっていません。人と同じ単一な構造です。離乳後のリーフモンキーは葉っぱを消化しやすいように大きな胃が複数の部屋にくびれ分かれた構造へと変わっていきます。ただただ愛らしい赤ちゃんですが、身体の外も内も大きく成長中なのが今のウイなのです。
 サルの成長についてまだまだ不明な点が多く残っています。この毛替りの様子は記録を残し、公式ホームページ(飼育室)で「金色赤ちゃん成長記録」として公開しています。成長の様子をどうぞご覧ください。(2014.6.4)


 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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