おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
                   
 『実物大の夏休み』

 動物園に出かけて「実物大の夏休み体験」をしてみませんか。この夏のお勧めは、体重30キログラムにもなるアヌビスヒヒです。体重30キロは、小学4年生の平均体重に相当しますので、小学生の皆さんには、ぜひ自分の身体と実物のヒヒの身体とを比べてみていただきたいと思います。
 例えば顔ですが、写真はアヌビスヒヒのオスの顔です。生きているオトナオスの顔はビデオや図鑑で見るよりずっと大きく感じるはずです。顔を大きく見せているのは、大きな口、伸びた鼻、そして眼の上の突起です。大きく口を開けると牙(犬歯)がとても大きいのが目に入ります。大きな犬歯は力と地位の象徴であり、群れの中で何時もいつも武器として使うわけではありません。鼻筋は伸びていますが鼻の穴はその先に控えめに付いています。眼はさほど大きくはなく、穏やかで好奇心旺盛な眼に見えます。眉毛の位置にあるのは眼窩上隆起(がんかじょうりゅうき)といい、文字どおり、眼の上の出っ張りを云います。顔をいかつく見せているこの庇(ひさし)状の構造のおかげで、ヒヒは強い夏の日差しの下でも眼をパッチリと開けていられます。
 現在ビジターセンターでは、特別展「モンキーセンター・コレクション 〜博物館を支えるモノ〜」を京都大学・霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院の共催で開催中です(8月31日まで!)。会場ではヒヒの仲間の本物の頭蓋骨も展示してあります。骨の状態でのヒヒの顔や頭がどのような造りになっているのかもぜひ確かめてみてください。(2014.8.20.)

       

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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