おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 今日登場するのは「コモンウーリーモンキー」の赤ちゃん(「セイロン」男の子)です。4月19日生まれですので、生後半年が経過しました。 一般にサルに対するイメージには、尾も含めて両手両足を上手に使って木にぶら下がったり、枝渡りをしたりする絵を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際には尾でぶら下がることのできるサルは限られています。 ホエザルの仲間、クモザルの仲間、そしてこのウーリーモンキーの仲間です。クモザルとウーリーモンキーは当園でご覧いただけますので、その尾のぶら下がりの秘密をご紹介します。 まずは、筋力です。尾の太さは腕よりも太く、足と比べてもそん色がありません。解剖学的にも、尾には太い腱が発達しています。次に滑り止めです。尾の内側(ぶら下がる部位)には、毛が生えていません。皆さんお持ちの指紋同様、汗をかいて滑り止めにもなる「尾紋」が備わっています。 最後には、これらのサルたちが生後間もなくから自然と取組む訓練です。生まれたての赤ちゃんでも尾をクルリと巻きつけることができて、お母さんの尾に自分の尾を絡めて落ちないようにしています。 そして、この子のように独り歩きが始まる頃には、尾と手足をバランスよく使って、ケージ内を遊びながら自由に動き回る毎日となります。細かった尾も今では足並みに太くなり、筋力も付いてきました。 緊張が走ると、急いでお母さんのもとに駆け寄りおっぱいをねだる姿はまだまだ赤ちゃんですが、少しずつ成長し、力強く自力で生きていこうとするこの子の姿にはとても勇気づけられる思いがしています。(2013.11.06) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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