おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 今回ご紹介するのは「ヨザル」です。漢字で書けば「夜猿」、英名でも「ナイト・モンキー」と云われており、夜行性のサルを代表する名が付いています。原始的なサルと位置付けられる「原猿類」には夜行性のサルが何種もいますが、ヨザルを含むサルらしいサル「真猿類」の仲間では唯一の夜行性です。 ヨザルの英名にはもう一つ「アウル・モンキー」の名があります。梟(ふくろう)ザルです。梟のように大きな眼が印象的です。ヨザルの眼球はほぼ球形で直径19o、重さは片目で4.3gという記録が残っています。 私達ヒトの眼と比べると直径で数o小さく、重さでは4割以上少ない数値ですが、ヨザルの体重が1s程であることを考えるとこのサルにとって眼はとても大きな器官であることがわかります。 夜、車を運転していると夜行性の動物に出会うことがあります。たとえばネコですが彼らは立ち止まってこちらを見ますので、そのキラリと光る眼を見ると何mも離れていても目が合った感覚が残ります。 これはネコの眼に「タペタム」という名の光の反射板が備わっており、これに車のライトが反射され光って見える現象です。真っ暗な夜の世界で少ない光の情報を集積するのがタペタムの役目です。原猿類の夜行性ザル達はこのタペタムを持っており暗闇で光を当てるとネコの眼のようにキラリと光ります。 さてヨザルですが、実はこのタペタムを持っていません!夜行性で、ナイト・モンキーで、梟ザルなのに…。なぜ? 答えは真猿類への進化と多様性にあるようです。 現在当園で開催中の特別展「アマゾンの光と影」にあわせ数回にわたり南米に住む生きもの達を紹介してきました。ヨザルもアマゾンの大切な構成メンバーです。不思議な進化を辿ったヨザルにぜひ会いに来て下さい。(2014.1.15) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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