おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
        

 10月12日、この夏に生まれたチンパンジーの赤ちゃんの名前が決まりました。皆さまからの公募と投票で選ばれたのは「マモル」です。おかげさまで元気に育っています。
 去る7月25日朝のこと、チンパンジーの屋内運動場に落ちていた血痕を見つけ、出産が分かりました。母親「マルコ」の胸に抱かれた赤ちゃんはやや小さめではありましたが、自ら腕を伸ばしてしがみつく様子が見られました。その後、授乳も確認され即日公開となっています。
 マルコは、ブリーディング・ローン(繁殖を目的とした動物の貸借)で豊橋総合動植物公園よりお借りしているチンパンジーです。日本モンキーセンターでは14年ぶりのチンパンジーの出産となり、2園協働の繁殖プロジェクトが成功した形となっています。マルコにとっては2産目でしたが、豊橋での最初の出産では残念ながら生後2週間で死亡したとのことでした。京都大学の霊長類研究所や野生動物研究センターの専門家に助言を求めながら、酷暑を避けて、朝の涼しい時間帯のみの屋外放飼としたり、脱水予防のためマルコに水分の多い餌をあげたりするなどの工夫をしました。父親である「ツトム」がマルコに促され怖々マモルに触れるシーンを初めて見た時には、とても感動しました。
 生後3か月が過ぎ、口元の表情がツトムに似ているように思えてきました。目も見えており、写真のように「たかいたかい」をされた時などに母子間の視線の交わし合いを見ることができます。秋の遠足シーズン、子どもたちにとっても思い出に残るチンパンジーの親子の姿になっています。(2014.10.29.)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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