おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 月明かりだけが頼りの暗い森の中、樹冠と呼ばれる高い木の上で、耳をそばだて目を見開き、枝をしっかりと握りかえながら一歩一歩グイグイと突き進む小型のサル。「ポト 」 を紹介するときに思い浮かべるイメージです。 ポトは、アフリカ原産の原猿類(原始的なサル)で夜行性。明るいときに休息をして、 暗くなると活動するサルです。前方に大きく開いた毛の薄い耳と茶褐色の大きな瞳を持っています。この耳や目が追うのは、全食事の一割ほどをまかなう昆虫類です。 闇夜に枝から枝へとジャンプ移動するのは危険が伴います。バサバサ葉の音を立てて動き回れば、好物の昆虫にも逃げられてしまうでしょう。ポトは着実に枝を保持し、静かにそしてすばやく動き回ることができる、そんなからだの仕組をもっています。まず気づくのが太くてたくましい手足です。次に見えてくるのが、痕跡程度に短くなった人差し指と、ほかの指と大きく離れて開くようになった親指です。写真では太い枝をつかんでいますが、枝に掛かっている指が3本に見えるのはこのせいです。小さなからだですが握力はなかなかのもので、ポトにつかまれると握られたまま離してくれないことがあります。 当園では、夜行性ザルのコーナーを昼夜逆転して展示しています。開園時間中、満月の夜くらいの暗さに設定しており、ポトは午後から閉園時間前に特によく動いています。この暗闇の時間帯に見ていただくのがベストです。 さて、今日4月1日は、日本モンキーセンター公益財団法人化1周年の記念日です。本日に限り、附属世界サル類動物園の入園料を無料で開放します。どうぞご来園ください。(2015.4.1) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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