おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
                

 ヒトとサルとの関わりは、お国柄やサルの種によって様々です。悪魔の使いとして忌み嫌われているものもいれば、インドの「ハヌマンラングール」のように聖獣、神の使いとして手厚く保護されてきたサルもいます。
 ハヌマンラングールの社会は、おとなオス一頭と複数のメス、そしてその子ども達からなる単雄複雌(たんゆうふくし)のハーレム型です。群れのトップのオスが、力をつけた若いオスに追い出されてしまうことが起きると、乗っ取ったオスにより、追い出されたオスの子どもが殺されるという行動が京都大学の研究者によって発見され、子殺し行動として報告されました。「子殺しの行動学」(杉山幸丸著)としても上梓され大きな話題となりました。
 このハヌマンラングールは、現地で「ボンネットモンキー」という名のサルと共棲していることから、日本モンキーセンターでも昭和30年代終わり頃、この2種のサルを同じ施設内で放飼展示した記録が残っています。50歳代以上の読者の中には記憶されてみえる方もあるかもしれません。
 もともと葉っぱが主食のサルで飼うのが難しく、飼育園数も多くはありませんでした。現在国内で残っているハヌマンラングールは10頭を切り、日本モンキーセンターでもメス一頭を残すのみになっていました。この度、山口県宇部市ときわ動物園よりオス1頭を譲受け、残されたわずかなチャンスに賭けることになりました。こうして来園したのが写真の「サミー」です。約2週間のお見合い期間を経て、5月上旬より公開をしています。引き続きこのペアを温かく見守っていただければと思います。(2015.6.10)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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