おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 「好奇心、熱視線 母親と同じ対象をみつめていることに意味がある」 チンパンジーの「マモル」が満1歳になりました。予定日より早く生まれたこともあり、小さめの赤ちゃんでした。当園としてもチンパンジーの出産は14年ぶりでしたので、待望の赤ちゃん誕生です。出生直後から母親「マルコ」にしっかりと抱かれる姿が確認されたことから即日公開となりました。生後6日目には、父親「ツトム」との感動的なふれあいシーンも初めて観察されました。 今春に入りおんぶされることを覚え、近頃ではマルコから少し離れてひとり遊びをするようになっています。チンパンジーの子育てと学びは「教えない教育・見習う学習」と云われます。チンパンジーの子どもは、おとなの行動をよく見て真似ようとします。父親のディスプレー、母親との視線の交わし合い(コミュニケーション)、餌の探し方、木のぼりの仕方などなど、チンパンジーとしての生きるスキルを日々の生活の中で学んでいきます。マモルの生活の質は、お手本となる両親の生活の豊かさに左右されるのです。 モンキーセンターでは、環境エンリッチメントに取り組んでいます。動物の福祉に配慮して、動物本来の行動が自由に発現できる飼育環境をできるだけ整えてあげる活動です。マモル親子の生活エリアでも、自然木の中に餌を隠したり、殺風景だった屋内運動場に木々やロープを張り巡らしたりしています。マモルはまだ母親に抱かれている時間が多く、母乳を飲んでいるため自ら餌探しをするわけではありません。しかし、1歳のこの時期に親の自然な行動を見せてあげることがチンパンジーとしての豊かな一生にきっと役に立つのだろうと思います。 猛暑続きの8月でしたが、処暑もすぎてすごしやすくなりました。どうぞマモルに会い にきてください。(2015.08.26) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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