おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
日本モンキーセンターでは、今年も出産シーズンを迎え、5月8日までに7種16頭のサルが生まれました。ゴールデンウイーク中には、「赤ちゃんガイドツアー」を開催し、多くのお客様に愛らしい赤ちゃんの姿をご覧いただきました。

なんといっても今年のトピックはリーフ・イーターと呼ばれる葉っぱが主食のサル2種に相次いで出産があったことです。3月22日には中央アフリカ原産のアビシニアコロブス(写真左)が、4月22日には東南アジア原産のフランソワルトン(写真右)が、それぞれ生まれています。これらの出産は当園でも過去に例が少なく、この2種の赤ちゃんが同時に見られたことは非常に幸運でした。
   
      

アビシニアコロブスの親の被毛は白黒ツートンの直毛ですが、赤ちゃんは全身白銀色で柔らかくカールしています。フランソワルトンは、親が全身黒色の直毛で顔のもみあげ部分だけに白い毛が生えているのに対して、赤ちゃんは全身黄金色。頭の毛の生え方も変わっていて、赤ちゃんには右巻きの「つむじ」まであります。

こうした母子の毛の違いも生後数ヶ月限りの期間限定です。離乳期までには少しずつ生え替わり、親と同じ毛色と毛質に変化していきます。

どうして赤ちゃんの毛色が親と同色で保護色とならないのか?
どうして親と同じ体色に変わるのが離乳期後なのか?
どうして赤ちゃんから親に成長する過程で、体色を極端に変化させるサルがアフリカにもアジアにも棲んでいるのか?
興味が尽きません。

白銀色の赤ちゃんと黄金色の赤ちゃんを同時に見比べることのできる期間はあとわずかです。どうぞかわいい赤ちゃんに会いに来てください。
(2016.05.25)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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