おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
ヤクニホンザルは、鹿児島県大隅諸島の屋久島に棲息する日本固有のサルです(写真1)。日本モンキーセンターには、昭和31年12月、79頭のヤクニホンザルが捕獲され、翌年春に愛知県犬山市の大平山に放飼された記録が残っています。「犬山野猿公苑」の始まりです。この野猿公苑のサルたちは、平成に入り現在の「モンキーバレイ」に引っ越しをしています。現在いるサルたちは、島を離れてから3〜8世代を重ねた末裔です。 ![]() (写真1) モンキーバレイで見られる珍しい行動に「イモ洗い行動」があります。イモ洗いは宮崎県の幸島に棲息する野生のニホンザルに見られる有名な行動ですが、モンキーバレイでは平成9年に確認され、現在50頭がおこなっています。先日鹿児島市で開催された日本霊長類学会大会で、モンキーバレイ担当の飼育員がこの珍しいイモ洗い行動の詳細について発表をしました。 学会参加は研究活動をする動物園職員の大きな仕事の一つですが、飼育スタッフにとって、担当動物の生息地を知ることも併せて大きな意味があります。今回私たちは、学会出張に先立って屋久島生息地研修の機会を得ました。「月のうち、35日は雨」といわれる屋久島で豪雨にも遭遇しました。うねり落ちる大滝、深緑の苔におおわれそびえ立つ屋久杉など、ヤクニホンザルの生息地の自然を体感するとともに、アカウミガメの産卵や、サルと行動を共にするヤクシカ(写真2)も観察することができました。 ![]() (写真2) 動物園は「自然への窓」だと私たちは考えています。生息地でのこうした実体験を動物の飼育に活かしていくとともに、来園していただくたくさんの方々に伝えていきます。夏休みには、手近にヤクニホンザルに出会えるモンキーバレイにぜひお越しください。 (2016.08.03) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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