おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
動物たちをオリや柵で囲わずに飼うことは、動物園の飼育員にとって長年の理想です。今年60周年を迎えた当園においても、その理想を追いかけ、実現させてきた歴史があります。今から54年前の1962年春、当時の「こども動物園」のエリアに「クモザル山」を開設しました。当初17頭のクモザルを放し飼いにした記録が残されています。オリは無くなりましたが、周囲は全て電気柵で囲っており、その維持や管理には大変な苦労があったようです。

クモザルは地面を素早く駆け回ったり、木々の間をジャンプしたりすることが苦手なサルです。その代わり長い手足や特徴的な尾を上手に使って一歩いっぽ確実に頭上を渡り歩いていきます。時には尾を使ってクモのようにぶら下がることもできます。



時が流れて10年前、現在の施設「クモザルの島」がオープンしました。場所が移され、増築もされて三代目の施設となっています。名前のごとく「山型」から「島型」に変更され、電気柵の施設は最小限に留められました。代わりの脱出防止策として、クモザルが泳げないことを利用して周りを池で囲っています。これによりヘビやその他の獣(けもの)が侵入できなくなり、クモサルたちにとってもより安心安全な住処(すみか)となっています。
池をまたいだ島の間に全長およそ100m、平均高6mの吊り橋が架かっています。ここでおこなわれる飼育員による解説ガイドは、遠足や校外学習の定番メニューとなりました。この秋も橋の下で多くの子どもたちが歓声をあげ、クモザルに魅せられて帰っていきました。

(2016.12.7.)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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