おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 


四季があり厳しい冬のある日本では「猿団子(さるだんご)」という名のお団子がお目見えします(写真1)。
雪の朝にはふわふわで、大きなお団子になっていきます。日本モンキーセンターのヤクニホンザルは「たき火にあたるサル」で知られていますが、この猿団子も知る人ぞ知る犬山の冬の風物詩です。

ヤクニホンザルは、鹿児島県屋久島に棲むサルです。屋久島というとトビウオが飛ぶ南の島のイメージから、暖かい島を想像しがちです。しかし、島の中央部には九州最高峰(!)の宮之浦岳がそびえたち、2月には氷点下になることもあります。平地は雨でも、山に入れば雪に変わり積雪が見られます。森に積もった雪は何日も消えないそうです。屋久島のヤクニホンザルたちは、ここ犬山よりも寒い冬を過ごしているのかもしれません。

犬山では先月立て続けにまとまった雪が降りました。雪と遊んだり、中には雪をほおばったりするサルたちもいて、飼育員たちは雪かきの合間にそれぞれが担当するサルたちの姿をインターネットで発信していました。
(日本モンキーセンター公式HP「飼育の部屋」をご覧下さい)

ヤクニホンザルは、雪の朝でも日光さえ注げば普段どおりの動きをします。高さのある櫓(やぐら)にもするすると登り、いつもどおりのあいさつをしてくれました(写真2)。



「春(はる)は、万物が発(は)る季節」と言われます。空は晴(は)れ、木の芽が張(は)り、いのちが生まれ発します。このヤクニホンザルも春の出産シーズンを前にして母親のおなかの中では新しいいのちが宿り育っていることでしょう。厳しい冬は、万物が発するためのたいせつなバネになっているのかもしれません。(2017.2.15.)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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