おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 
「マモル3歳の夏休み」

夏は子どもを成長させます。
日本モンキーセンターのチンパンジー「マモル」は7月25日に満3歳の誕生日を迎えました。屋外でのかけっこや木登りが目にみえて上達し、ずいぶんと筋力がついてきました。薄い肌色だった顔や手足も日に焼けて褐色の肌になってきました。
しかし成長の証は体力や日焼け跡だけではありません。


<父親ツトムとフルーツを分け合う>

チンパンジーはもともと複数のオスと複数のメスのいる群れ社会で生きています。
マモルは生まれたときからずっと父親ツトムと母親マルコとの3人で過ごしてきました。小さく産まれたマモルに対して、神経質なマルコには落ち着いて育児をしてもらうことができましたが、一方でほかのチンパンジーとのくらしは未経験でした。

モンキーセンターでは夏を控えた時季からマモルと複数の大人メスとの同居を粘り強く試み、成功させてきました。
チンパンジーを担当するスタッフチーム3名には3歳になるマモルにこの群れ社会のくらしを早く経験させてあげたいとの願いがありました。


<3歳児への授乳はチンパンジーではふつう>

7月14日、犬山を嵐がおそいました。豪雨と雷鳴がとどろくなかで、マモル親子はおばさまチンパンジーと一緒に避難していました。
マルコとだけでしたら、怯えや怖れからちびってしまったかもしれませんが、経験豊富なおばさまチンパンジーと過ごしてきたことで精神的にも成長し落ち着いてすごせたようです。

【教えない教育・見習う学習】がチンパンジーの教育の基本。
「子どもが関わってくる限り、おとなは邪険にせず寛容であること」がひとつの大事なポイントとされています。母親とは立場が違うおばさまチンパンジーの寛容さによってもマモルのこころは成長が促されているようです。
(2017.9.6.)

 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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