おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。



今年は戌(いぬ)年。日本モンキーセンターでは「イヌヒヒ」とも呼ばれる「アヌビスヒヒ」を
メインに新年のお客様をお迎えしました。「犬」の付く自治体は地元犬山市だけということ
もあって注目をされ、遠方からの来園者も多く見受けられました。



アヌビスヒヒはアフリカのサハラ砂漠より南、赤道付近のサバンナや乾燥帯に広く分布す
るヒヒの仲間です。ヒヒはサルの中では比較的大型で、木にも登りますがたいていは四足
で歩き走りまわる地上生活者です。オトナの体毛はオリーブ色をしています。吻部(鼻先)
がイヌのように大きく長い顔立ちや、「ワン」という鳴き声から、モンキーセンターでも昔は
「ドグエラヒヒ」(イヌのようなヒヒの意)と呼んでいました。学名に付くアヌビスはエジプト神
話に登場する「アヌビス神」が由来とされています。体色から「オリーブヒヒ」、生息環境か
ら「サバンナヒヒ」とも呼ばれます。これほど呼び名が多彩なサルも多くはないでしょう。



昨年9月、アフリカ・タンザニア生息地研修の機会を得てゴンベ国立公園を訪れました。
日ごろ見慣れたアヌビスヒヒですが、野生で暮らす姿を初めて見ることができました。早朝
から宿舎前に何頭もたむろして、立ちすくむ私の数メートル先を悠然と尾を立てて歩いて
いきました。息づかいや足音も聞こえる距離です。美しい毛色とつややかな鼻先などに感動
して夢中でシャッターを切っていました。



モンキーセンターでは、毎年2、3名の職員をタンザニア生息地研修に派遣しています。
現地で野生の動植物を直接見ることで新鮮な発見に出会えます。職員が撮り貯めた写真
を集めた「野生のアヌビスヒヒ写真展」をモンキーセンター内「ヒヒの城」前で開催中です。
2月26日までですので、どうぞお出かけ下さい。(2018.1.31)


 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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