おさる獣医師の動物園歳時記<自宅でできる夜間観察編>

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」<自宅でできる夜間観察編>です


 
焚き火にあたるサルとライブカメラ(左上)
<2003年1月19日撮影>
 
 「動物園のサル達は夜中どのように過ごしているのでしょうか?」
といったご質問に対してこれまで「風雪を避けて木の上で団子に
なって寝ているようです」と答えてきました。
夜間巡回の経験からの回答ですので、間違いではありません。
 
しかしここでは観察する私達の気配を忘れてはいけません。
特に群れで暮らすサル達は、人の気配に非常に敏感に反応します。
夜間観察においても施設に近づくずっと前から特有の警戒音を出し
て警戒しているのがわかります。従って観察されるサルの寝姿が
真の姿であるか疑問だった訳です。

 昨年十二月、焚き火にあたるサルでおなじみとなった「モンキーバレイ」
において、ライブカメラを導入しました(写真)。インターネット上で
常時ヤクニホンザルの姿をリアルタイムに配信していますので、無人カメ
ラが捉えるサルの生活をどなたでも自宅から観察することができます。

 観察に障害となった人の気配は無人のカメラにはありませんから、真の
夜の姿を見ることができます。意外とよく動いていたり、無防備に船を
こぎながら寝ている姿など新たな発見があります。

 気配を感じ取るといったサルをはじめ動物が本来持っている能力を、
私達人間は次第に失いつつあるのではないか。
カメラを通してサルの寝姿を観察し、そう考えています。
 
(ご注意)焚き火にあたるサルは毎年、冬至からはじまり冬休み中の毎日と
その後は2月11日までの土日祝日に実施しております。
 

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
加筆修正を加えたものです。


 

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