おさる獣医師の動物園歳時記<冬>
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」<冬編>です
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焚き火にあたるヤクニホンザル(モンキーバレイにて)
今年も動物園に、冬の風物誌「焚火にあたるサル」の季節が訪れました。
冬至から寒さの最も厳しい2月上旬まで(*)日にちを限ってではありますが、
焚き火にあたるヤクニホンザルたちのとてもユーモラスな姿を見る事ができます。
彼らの冬の生活の一場面を6世代40年続いている焚火を通して覗いてみましょう。
一口に焚火といっても風向きで炎や煙の出る方向が変わるため、
座る場所にも良いポジションと悪いポジションがあります。
両手を上げて腹部を暖める独特のポーズで暖を取りますが煙たいと顔だけそむけ、
火に近づき過ぎたり急に風向きが変わると額の毛を焦がします。
時には強いサルに追われてあわてて火の上を飛び逃げます。
焚火には10キロもの好物のさつま芋が仕込んでありますからたまりません。
午後2時頃さつま芋の焼ける匂いがしはじめると、
群れ中のサルたちが落ち着かなくなります。
出された焼き芋を仲間に横取りされないようにわれ先につかみ去りたいのですが、
焼きたて芋はホカホカでなかなかそうはいきません。
「アッチッチ」とお手玉をするように左右の手で持ち替えますが、
この時には手がふさがってしまうため
後足で立ってピョンピョンと飛んで歩くはめになります。
頬張った熱い芋を大あわてで口から出しているサルを見ていると、
火傷をしやしないかととても心配にはなりますが、
獣医の立場を忘れて思わず吹き出してしまいます。
冬の風物詩「焚き火にあたるサル」は、寒さの厳しい日ほど見ごろといえるでしょう。
(*)今シーズンは平成13年12月22日(土)〜平成14年1月6日(日)の毎日と
平成14年1月12日(土)〜平成14年2月11日(祝)の土・日・祝です。
時間は午前11時30分ごろから午後2時ごろまでです。
雨天時・荒天時には中止となります。
この原稿は中日新聞愛知県内版に昨年1月に掲載された「愛ラブ自然」を元に
加筆修正を加えたものです。