おさる獣医師の動物園歳時記
【 ニホンザルの衣替え編 】
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です
世界サル類動物園アジア館にて
衣替えを終えたニホンザルのオス
(平成16年6月撮影)
本格的な夏を前に夏装束に衣替えをするサルがいます。
四季のはっきりした日本に棲むニホンザルはその代表で、
見た目にもはっきりとその様子がわかります。
しかし、そうは言っても人の衣替えのように一斉にというわけにはいきません。
五月中に早々に替わるものからヒグラシが鳴き始める頃にやっとというものまでさまざまです。
毛替りの個体差には、栄養状態や新陳代謝が関係しているようで、
心身ともに充実している若オスは早く、
老齢ザルや出産後授乳中の母ザルは遅くなります。
授乳中の母親は毛替りが遅れている
抱かれているのは春生れの赤ちゃん
(生まれたときは真っ黒な毛が生えている)
赤ちゃんもこの時季から毛替りをはじめるが
額の部分の毛が薄く見えるのはそのため
(上のオスの写真と同時期に撮影)
また春生れの赤ちゃんもこの時季から徐々に毛替りします。
毛替りの観察は、サルの健康状態や赤ちゃんの発育状態をチェックするうえで
重要な指標となっています。
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は同カットですがカラー写真を用いたり、新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。