おさる獣医師の動物園歳時記
【 ご長寿お祝い編 】
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です
世界サル類動物園南米館にて
クロクモザルの「ブエノス」はセンター一番のご長寿ザル
風で落ちた木の実をじっとながめる
(写真左が「ブエノス」、右が若いパートナー:平成16年9月撮影)
43年前の9月15日、モンキーセンターにやってきたクロクモザルの「ブエノス」(メス)は
今年も間もなく「敬老の日」を迎えます。
お達者な彼女は、モンキーセンター版サルの長寿番付において
「東の横綱」の座を10年以上も守り続けています。
クロクモザルは、細長い手足に加えて、5番目の手ともいえる器用で太い尾を持っています。
尾だけでぶらさがることができ、ふっくらした下腹部とあいまって
そのシルエットがクモのようにみえます。
彼女はこの尾の使い方が特に上手で、
しばしばサルの解説記事に登場してきました。
また、彼女は長い動物園生活の中でもいたって健康で、
診療記録を紐解いても病歴は数えるほどしかありません。
軽い鼻かぜや食あたりなどで、いずれも1回の投薬で治癒しています。
入院歴もありませんでした。
若きパートナー(右)に恵まれた「ブエノス」
仲良く暮らしています
身体能力が高く、性格的にも穏やかでストレスを溜めないのが長寿の秘訣なのでしょうが、
ブエノスの場合、これらに加えて生来の好奇心の旺盛さ、人なつこさが
健康管理をする飼育係や獣医師とのコミュニケーションに大いに役立っているのだと思います。
長年「一人暮らし」でしたが、10年前から若いパートナーと仲良く同居をしています。
このことも長寿の秘訣の一つかもしれません。
目の衰えは若干あるようですが、これからも元気で、長寿記録を伸ばしてほしいと願っています。
(平成16年9月17日記)
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は同カットですがフルサイズの写真を用いたり、新たな写真を加えています。またテキストは加筆修正を加えています。