アジアのサルはいつどこから来たのか 高井 正成 京都大学・霊長類研究所 現在アジア地域に生息する旧世界ザル類(オナガザル亜科とコロブス亜科からなる)の進化史について、化石記録に基づいて解説する。現在アジアには6属のコロブス亜科が生息しているが、オナガザル亜科はマカクザル1属のみである。両亜科は共に中期中新世にアフリカ大陸で起源したが、コロブス亜科の方が先にユーラシア大陸に侵入した。この進化史の古さが両者の属レベルでの多様性の違いに反映されているようだ。また、コロブス亜科の化石は現生種が多数生息している南〜東南アジア地域だけでなく、シベリア南部や日本からもみつかっているのに対し、アジアのオナガザル亜科の化石記録は東アジア、特に中国大陸に偏在している。しかしヨーロッパ、中央アジア、東アジアなどの広い地域から大型の化石種が見つかっていて、かつてはマカク以外のオナガザル亜科が反映していたことを示している。彼らの侵入時期と経路について、最新の発見と仮説を紹介したい。 |