おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 

 動物園や水族館では、飼育する希少な生きものを対象として
種の保存を目的に、種保存委員会が組織され、
血縁の維持や繁殖をめざして動物の貸し借りが行われています。

婿取りや嫁入りとして報じられるのはこのことを指す場合が多く、
専門的な用語として
「ブリーディングローン(繁殖目的の動物の貸し借り)」
という言葉が使われています。

チンパンジーもこの希少な種の一つとなっています。 
 昨年11月、当センターから和歌山の動物園に貸し出していた
オスのチンパンジー「ツトム」が無事帰園しました。
先方の動物園では2003年暮れから約5年間に
2頭のメスを妊娠出産に導き、内一頭は元気に育っています。
 




ツトムは、1985年生まれの24才。
ヒトの年齢にすれば、50歳前後の男盛りでしょうか。
帰園後は生まれ育ったアフリカセンターに戻り、
血縁のないメスと同居を再開しています。

はじめは、これらおばさまメスとの関係に
ぎくしゃくしたところもあったようですが、
今では繁殖オスとして確固たる地位を取り戻した感があります。
 
リラックスした際に口元が緩む癖は父親そっくり。
整った顔立ちとスタイル、社交的な性格は母親ゆずりです。
父親はすでに他界していますが、
母親「フジコ」は同じアフリカセンターで元気に暮らしています。

春の一日、ツトムやフジコに会いに来てください。
(2009年3月25日)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


↓バックナンバーはコチラから↓
〜過去の動物歳時記「よもやま話」〜


 日本モンキーセンターTOP