おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 

 

マンドリルの赤ちゃん「ニョッキ」をご紹介します。
ニョッキは9月7日生まれの男の子です。
今では1.7キログラムを超えて、
天気の良い日には日光浴もしています。



実はこのニョッキは生後、
母親「ニコ」の授乳がうまくいかずに人工哺育になりました。
 ニコはまだ18才ですのでまだまだ「現役」。
ニョッキは6番目の子どもでしたので、
「女盛りのベテランお母さんの出産」
として見守っていました。

サルの出産にはいろいろな条件が必要です。
ニコの側になんらかの不調があったのでしょう、
翌日夕方には抱くことができなくなったため、
取り上げる決心をしました。

9月とはいえコンクリートの上に置かれてしまいましたので
低体温でショック状態。
授乳がなかったため脱水や低血糖を起こしていました。
細い血管を探って、緊急で点滴(補液)をしました。

この時の体重は約650グラム。
本当に小さな命が診察台の上で
生きよう生きようともがいていたのを覚えています。

 マンドリルは、絶滅の危機に瀕している希少種の一つです。
単雄複雌(たんゆうふくし)の大集団を
形成するサルということもあり、
当園では大きな飼育空間を取って群れで暮らさせる工夫をしています。

群れ内には8月生まれの女の子「ヤッコ」もいます。
社会性をしっかり身に付けるためには、
独り立ちできた段階での早期の群れ戻しが必要で、
今後の課題となります。

 手塚治虫さんのアニメにも登場したサルですので
認知度は非常に高いのですが、
国内で飼育している動物園はわずかです。

かわいい盛りは期間限定ですので、
年末年始のお休みにはニョッキやヤッコにぜひ会いに来てください。

2009.12.23

木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)



この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


↓バックナンバーはコチラから↓
〜過去の動物歳時記「よもやま話」〜


 日本モンキーセンターTOP