おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。


 

      今日ご紹介するチンパンジーのナオコさんは、
    1981年9月15日生まれの30歳でシニア世代です。

             

 25年前にはるばる欧州の動物園から来園しました。最初はなかなか仲間となじめず苦労がありましたが、今では年下のツトムくんと仲良く暮らしています。当園ビジターセンター前の広場には、地元の日展会友作家亀淵元昭先生の手による「ヒト科 チンパンジー ナオコ」という作品を展示させていただいており、そのモデルとしても大変親しまれています。
 この夏スペースシャトルの引退で宇宙に関心が高まり、夢ではなく計画として滞在型宇宙ステーションが語られるようになりました。その昔、世界最初の有人宇宙飛行に先だってリスザルやアカゲザル、そしてチンパンジーも宇宙に行っています。人に最も近いチンパンジーを飛ばすことは、宇宙におけるストレスや精神状態、生理的影響をチェックするために必要な最終段階でした。「ハム」という名のチンパンジーが宇宙旅行をして今年はちょうど50年です。半世紀前の生きもの分類では、チンパンジーはオランウータン科、人はヒト科に分けられていました。今ではチンパンジーも人も同じヒト科にまとめられています。
 ならば、最初のヒト科宇宙飛行士は「ハム」ということになります。思慮深いナオコさんにソコのところをどう思うか聞いてみたいと思いませんか?(2011.09.21.)


 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。


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