おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 今日取り上げるのは、世界最小級のサル「ピグミーマーモセット」です。 アマゾン川上流に生息する真猿類で、頭胴長14センチ、尾長20センチ、体重100グラムが平均的な3サイズです。大人の両手に収まってしまうサイズと言えばわかりやすいでしょうか。 名前からしてずばり「小さなかわいらしいサル」を意味していますが、英語圏では「フィンガーモンキー」とも呼ばれています。 しかし、このサルのすごいところは小ささだけではありません。森の高木をリスのように素早く走りまわることができます。太い枝は小さな手では握りきれませんので、尖った爪を引っ掛けて移動しています。 強力な武器を持たない身で天敵から逃れるには、フリーズして固まるか(皮毛が保護色になっています)、すばやく逃げるかしかありませんので命を賭けた一瞬の判断になります。 大きいと10頭ほどのグループを作りますが、基本は家族集団です。1回の出産で2頭の赤ちゃんを産み(1頭十数グラム、子宮はヒトと同じ単一子宮です)、妊娠期間は4.5カ月、出産間隔は半年です。性成熟に達するのにわずか2年、寿命も10年以上ありますのでもっと繁栄してもよさそうなのですが、現実は厳しく、他のマーモセット同様に絶滅の恐れがある野生動植物種(ワシントン条約)に指定されています。 果実や昆虫も食べますが、現地での一番の好物は樹液です。写真では巣箱の表面にえぐられた穴が写っていますが、これはこの子たちが小さな下顎の門歯を使って開けたものです。とまり木も入れていますが、どの木にも同じような穴が開いています。木に穴を開けて樹液を舐める習性が見てとれます。 現在園内で開催中の特別展では、アマゾンをテーマに自然や生きもの、文化などを紹介中です。アマゾンの大切な構成メンバーでもあるピグミーマーモセットにぜひ会いに来て下さい。 (2013.9.4) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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