おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
![]() 今年は雪と寒波で明けまして、雪かきや氷割が朝の日課となりました。その後も寒い日が続き、日本モンキーセンター冬の風物詩「ストーブにあたるサル」は今年もご覧いただくことができております。 施設内に設置した電気ストーブにあたりにくるのは、ワオキツネザルです。アフリカ大陸の東、マダガスカル島に生息するキツネザルの仲間で、原始的なサル(原猿)に分類され、特に体温調節のしかたに特徴のあるサルです。 原猿といっても私たちと同じく霊長類ですので、体温を一定に保つことのできる恒温性の生きものです。寒さの中での体温維持には、体を動かしたり代謝をあげたりして熱を作り出す発熱と、「鳥肌」ともいうように毛穴を閉じたり皮膚の血管を収縮したりして熱を逃がさなくする蓄熱を思い浮かべます。ワオキツネザルは、第三の手法、即ち外からの熱を吸収する方法で体温上昇を図るのがとても上手です。太陽の方向に向かって両手を広げ日向ぼっこをする姿がよく紹介されていますが、ストーブが太陽の代わりというわけです。 ストーブにあたるサルは、スタッフ用に設置したストーブに彼らが集まってきたのが始まりです。以来、スタッフのストーブはサルたちに貸し出されたままですが、おかげで、このようなユニークな行動を見ることができるようになりました。身体が濡れることを嫌いますので、スノコを前に敷いてセッティングしてあげています【写真】。彼らは野生下では雪を見ることはありません。このワオランドでの生活は十年近くになり、ほとんどがここで生まれ育った個体です。夜間はもちろん暖房の効いた小屋で過ごしています。昼間雪の環境下においても風邪をひくことはなく元気に飛び回っています。(2015.1.28) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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