おさる獣医師の動物園歳時記
いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。
「テナガザルのお誕生日会」 今年はIUCN(国際自然保護連合)によって「国際テナガザル年」と定められ、世界中でテナガザルの保全に関する様々なキャンペーンが展開されています。 日本モンキーセンターでは、京都大学霊長類研究所のテナガザル研究者の協力を得ながらテナガザルの生態、美しい姿かたちや鳴声、すばらしい運動能力や保護の現状等を伝える活動を実施してきました。 イベントの一環として行った赤ちゃんのお誕生日会はどの会も盛況で、担当の飼育員から多くの来園者にテナガザルの今をお伝えできたのではないかと思います。赤ちゃんはいずれも今年1歳を迎えたシロテテナガザルやフクロテナガザルの赤ちゃんたちです。誕生日がそれぞれ異なりますので夏から秋にかけて3回行いました。 シロテテナガザルの赤ちゃん「ジョージ」は昨年8月11日、台風による嵐の後に生まれました。ジョージの身体は小さくて腕も細いように感じました。その腕を伸ばすものの母親「ジェニファー」の支えがないと床にずり落ちてしまいそうでした。乳首はくわえていますが、十分量の授乳ができているのかどうか不安を抱きながら慎重に観察を続けました。 ![]() (写真1) 写真1は生後1週間後を写したもので、このころになるとジェニファーの乳首から母乳がしたたり落ちるのが見られたことから、ようやく一安心となりました。 ![]() (写真2) 今では、写真2(右側)のようにずいぶんと大きくなり、運動場を動き回っています。テナガザルの多くは東南アジアや南アジアに棲息しており私たち日本人とも決して無関係ではありません。ジェニファー親子を通じて彼らと私たちの関係について考えていただければと思います。かわいいジョージにもぜひ会いにきてください。(2015.11.11) |
この原稿は中日新聞愛知県広域近郷版に掲載された「愛ラブ自然」を元に
写真は違うカットを用い、テキストは加筆修正を加えています。
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