東南アジアの熱帯林がはぐくむ生物多様性

 

沼田 真也

 

首都大学東京・都市環境科学研究科

 

東南アジアの熱帯林はインドネシア、マレーシアを中心にした島嶼部とユーラシア大陸の一部に広がり、時に樹高70mを超えるような巨大な樹木が見られる森林に様々な生き物たちが生息している。この地域の熱帯林には、日本でもラワン材やメランティ材として馴染みが深いフタバガキ科(Dipterocarpaceae)の樹木が広く分布していることが特徴で、他の地域では見られない極めてユニークな現象を見ることができる。その現象は一斉開花(general flowering)と呼ばれ、フタバガキ科を中心とした様々な分類群の植物が、数年に一度の間隔で同調的に開花、結実するものである。同種の植物が同調的に繁殖するような現象は世界中の様々な地域で見ることができるが、様々な植物種の繁殖が超年的に同調するという点で、東南アジアの一斉開花は極めて独特なものであり、このような植物の繁殖リズムが東南アジア熱帯林の生物多様性と深く関連していると考えられている。今回は、東南アジアでしか見られない一斉開花現象について触れながら、東南アジアの熱帯林がはぐくんできた生物多様性について紹介したい。

 

 


世話人:西田利貞・清水大輔・大橋岳(日本モンキーセンター)




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