サルのいる風景 ―アジアの野外調査から― 川本 芳 京都大学・霊長類研究所 私はサルたちの生態や進化を知りたくて野外で遺伝子の調査を続けています。これまで、ニホンザルやその近縁種の生息地を訪ねながら、さまざまな風景を見てきました。地域や国が違うと、サルと人と関係も多様で、共存や共生の形が違うため、考えさせられることもしばしばです。今回の発表では、サルと人の関係を考えるため、アジアの野外調査で印象に残った風景から以下の3つを紹介します。 (1)コメンサリズムの背景:バングラデシュ都市部のサルたち (2)仏教国の悩み:タイとブータンに見るサルとの共存の模索 (3)消え行く民間信仰:日本の厩猿(うまやざる) (1)ではサルたちのしたたかさ(雑草性)やコメンサリズム(偏利共生/住家性)について、(2)では共存に関わる宗教性と生活規範について、(3)では民俗共生と日本人の時代的変化について、考えたいと思います。 |