ボノボの住むコンゴ盆地の大熱帯雨林: その現状と将来 古市 剛史 京都大学 空から見ると、人の爪あとなど何もないかのように見えるコンゴ盆地の大熱帯雨林。森林保護の必要性を説く私に「森なんていくらでもあるじゃないか」と答える村人の意見が、妙に説得力をもつし、ボノボなどとくに保護しなくてもいくらでもいるように思える。しかしこの森も、見えない形で確実にむしばまれ続けている。1996年から始まった戦争の前は、伐採権を得た海外の木材会社が、大規模な伐採に着手していた。戦争中は、森に逃げ込んだ人々があちこちに小さな家と畑を作り、森は虫食いのあとのようになっている。そして今、バイオエネルギーが実用化され、たいして役に立たなかったこの森が、アブラヤシの畑という巨大な油田に変わる可能性が出てきている。私たちがボノボの調査を始めてから40年近くにわたる変化を見つめ、森とそこに住む動物の将来を考えたい。 |