市川のプロフィールと活動内容

プロフィール

愛知県立時習館高校卒業(1965年)後、京都大学理学部、同大学院理学研究科で人類学、生態学を学ぶ。京都大学理学博士。

高校時代より山岳部に所属し、奥三河の山や、中央アルプス、南アルプスを歩く。大学では、当時、一番アクティブに活動していた大学山岳部があった京都大学に進み、入学式より前に山岳部の部室を訪れる。入学して2年間は1年の3分の1を山で過ごす。また、3年目から4年目にかけて、京都大学ブータンヒマラヤ偵察隊に参加。ブータンには短期間しか入れなかったが、入国許可を待つ間、インド各地、ネパールを回る。また、ブータン遠征終了後は、パキスタン、アフガニスタンの山岳地帯や、タイ、マレーシアなど東南アジア諸国を旅行。この旅行を通じて、自分の将来の目標を、フィールドワーク研究と定めた。帰国後、にわかに勉強をはじめ、他人より2年遅れて、理学研究科大学院に進学、人類学を修める。

その後、京都大学理学部・助手(1978)、同講師、京都大学アフリカ地域研究センター・助教授、大学院人間・環境学研究科教授、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授を経て、2010年、京都大学名誉教授(アフリカ地域研究資料センター特任教授)、2011年6月より現職。

京都大学在任中には主として、中央アフリカの熱帯雨林や湿地帯などにおいて人類学的調査に従事。熱帯雨林の伐採で生活環境が荒廃していく一方、植民地主義的で、強圧的な自然保護計画によって、居住地を制限され、森林資源へのアクセスを奪われていく住民、とくに先住民であるピグミー系の狩猟採集民等が困難な状況に陥っている実態に直面し、自然保護と住民生活を両立させるための研究に向かう。その過程で、野生動物や熱帯雨林の保護はきわめて重要だが、同時に地域住民の理解と協力がなければ、保護計画自体が難しいことを実感した。このような認識にもとづいて、以下のような研究を進めている。

現在の研究活動

2009―2013年度「アフリカ熱帯林における慣習的権利の確立と多民族共存に関する研究」(文部科学省科学研究費補助金:基盤研究(A))

近年、熱帯アフリカ諸国で相次いで森林法が制定・改訂されているが、それらの森林法を比較検討し、その施行の実態を調査して問題点を明らかにする。とくに非木材森林産物の利用の実態と経済価値を明らかにするとともに、GPS等を利用して住民による森林利用の空間的、時間的分布を地図化する。その上で、森林資源を重複して利用する民族集団間の調整方法を検討する。これらの作業を通して、熱帯雨林の保全と持続的資源利用を両立させ、それらをめぐる民族間の共存体制を確立するための基礎研究を行っている。

2011―2016年度「カメルーン熱帯林とその周辺地域における持続的生業戦略の 確立と自然資源管理:地球規模課題と地域住民のニーズとの結合」(独立行政法人科学技術振興機構・地球規模課題対応国際科学技術協力事業、研究代表者・荒木茂京都大学教授)

アマゾンに次ぐ規模を誇るコンゴ盆地の森林は生物多様性の宝庫であり、地球温暖化を防止する炭素貯蔵庫として重要な役割を果たしていることから、その保護に世界的な関心が集まっている。しかし、この地域では約6,000万人におよぶ住民が、燃料、食物、薬、建材、物質文化の供給源として、森林に強く依存している。

この研究では、熱帯林の保全と、その周辺地域を含めた地域住民の生活改善を両立させることを目的として、(1)新しい品種・農法の導入による持続的生産システムの確立、(2)非木材森林資源産物(NTFP)などの、森林が有する多様な価値の再評価と持続的利用の確立、(3)土壌-植物・物質循環の解析などによる生態学的資源管理の確立―の3点を核とする調査・研究を行い、森林保全に対する住民の能力強化に貢献することを目的としており、市川は(2)の森林に関する調査研究を担当している。

最近の研究業績(2011年)

論文・報告等

Ichikawa, M., 2011 Anthropologie Japonaises en Afrique. Techniques & Culture 57, Centre Norbert Elias-L’Ecole des Hautes Etudes en Sciences Sociales (EHESS), Marseille, pp. 120-141. 

ICHIKAWA, M., D. KIMURA & H. YASUOKA (eds.), 2012 "Land Use, Livelihood, and Changing Relationships Between Man and Forests in Central Africa", Edited by, African Study Monographs, supplementary Issue, No.43, pp.1-178.

ICHIKAWA, M., 2012 Central African Forests as Hunter-gatherers' Living Environment: An Approach to Historical Ecology. African Study Monographs, supplementary Issue, No.43, edited by Mitsuo ICHIKAWA, Daiji KIMURA & Hirokazu YASUOKA, pp.3-14.

市川光雄 「熱帯雨林保全と先住民問題―森の民の生活から」『椙山人間学研究』第7巻: 93-106。

学会発表・講演等

『森に生きる』第48 回日本アフリカ学会公開講演会 2011年5月21日 弘前大学

『かけがえのない熱帯雨林―いかに守ってゆくか』財団法人日本モンキーセンター創立55周年記念講演 2011年10月16日 犬山:財団法人日本モンキーセンター

『地球環境問題と先住民の生活-アフリカの森の民の世界から』森と草原の自然と文化講演会、2011年11月1日、愛知県立大学講堂 

『森の民ピグミーの生活から―日本モンキーセンターとアフリカ学-』椙山女学園大学人間学講座、2012年1月16日、椙山人間学研究センター

『Conservation of Tropical Rain Forests and Indigenous Peoples in Africa』(英語講演) 筑波大学生命環境科学研究科環境ディプロマティックリーダー(EDL)育成拠点、2012年1月20日、筑波大学

テレビ番組協力

NHK 『ヒューマン なぜ人間になれたのか―第4集 そしてお金が生まれた』2012年2月26日 午後9時~9時49分放送

最近の研究業績(2010年)

論文・報告等

市川光雄 2010「植生からみる生態史: コンゴ、イトゥリの森」 木村大治・北西  功一編『森棲みの生態誌』 京都大学出版会、101-118。

市川光雄 2010「アフリカ熱帯雨林の歴史生態学に向けて」木村大治・北西功  一編『森棲みの生態誌』 京都大学出版会、3-16。

市川光雄 2010「イトゥリの森の三兄弟」木村大治・北西功一編『森棲みの社  会誌』 京都大学出版会、151-155。

市川光雄 2010 「熱帯雨林保護と先住民問題」『総合人間学』第4巻:132-135。

市川光雄 2010 「人間の生活環境としての熱帯雨林―歴史生態学的アプロー  チ」『文化人類学(旧民族学研究)』74(4):567-585。

Mitsuo Ichikawa, Shiho Hattori and Hirokazu Yasuoka,2011 Environmental Knowledge among Central African Hunter-gatherers: Types of Knowledge and Intra-cultural Variations, In: Information and Its Role in Hunter- Gatherer Bands, edited by Robert Whallon, William A. Lovis and Robert K. Hitchcock, Costen Institute of Archaeology, Los Angeles:117-132.

学会発表・講演等

Mitsuo Ichikawa, Forty Years of Japanese Research on Central African Hunter-gatherers: Findings in Ethnobotany and Historical Ecology and Their Implications for Contemporary Issues. Special Seminar at L'Ecole des Hautes Etudes en Sciences Sociales (EHESS), 16th June, 2010, Marseille, France.

Mitsuo Ichikawa, Historical Ecology and Contemporary Problems in the Congo Basin Hunter-gatherer Studies. International Conference on Congo Basin Hunter-gatherers, 23rd-25th September, 2010, Montpellier, France.

市川光雄 「森に生きる―熱帯雨林保護と先住民の生活」京都大学アフリカ地 域研究資料センター公開講座、2010年11月21日、京都大学稲盛記念館。

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