テナガザル:石田
テナガザル担当の石田です。
TwitterやYouTube配信でもお伝えさせて頂きましたが、2021年9月10日、シロテテナガザルのジェシカ♀が天国へ旅立ちました。
1996年11月2日生まれの24歳でした。

9月7日の朝に若干の食欲低下がみられた為、獣医さんに相談して投薬を開始し、夕方には食欲が回復してきていました。
翌日の8日には食欲全開のいつものジェシカに戻り、ホッとしていました。
しかし、その翌日9日に再び食欲低下がみられ、身体もダルそうにしていたので薬を追加していただき、様子を見守りました。
そして9月10日の朝、寝室内で亡くなっているジェシカを発見しました。
解剖所見は多臓器不全でした。
こんなに突然彼女との別れが来るとは夢にも思っていませんでした。
まだ信じられない気持ちでいっぱいです。

私がジェシカの担当になったのは1年ちょっと前の2020年6月でした。
ジェシカは、当時単独で暮らしていたシロテテナガザルのキュータロウ♂とペアリングする為にバックヤードからギボンハウスへやって来ました。
ジェシカ自身も長期間バックヤードで単独生活を送っていたため、お互いの福祉向上を目的とした取り組みでした。
ひときわ身体の大きなジェシカと、ひときわ身体の小さなキュータロウ。
最初は上手くいくか不安なペアリングでしたが、良い意味で裏切られ、「ジェシキュー」なんて呼称ができるほど多くの方に愛していただける名コンビになりました。

グッズ販売も展開され、大好評でした。

皆さまのジェシカのイメージといえば「よく食べる」ではないでしょうか?
はい、その通りです。
ジェシカはとにかく食べることが大好きでした。

食べる量もスピードもすごくて、一緒に食べているキュータロウの3倍ぐらいのスピードで食べ物を胃袋に入れていくので、いつも「キュータロウ早く食べるんだ!取られるぞ!」なーんて、やりとりが発生してました。
ただ好き嫌いはそこそこ激しくて、食べないものも結構ありました。しかし彼女なりのプライドなのかは分かりませんが「差し出されたものは全て受け取る」という謎ポリシーがあって、気に入らないものでも一旦は受け取って、そのあと床に投げ捨てる。という飼育員泣かせの一面もありました。掃除が大変でした。
ジェシカはギボンハウスに来た頃は体重が10kgを超えており、シロテテナガザルのメスの平均体重が約7kg程度ということを考えると、ぶっちゃけ肥満体型でした。特にお腹周り。
母親のジェニファーによく似て、小顔美人だったので「痩せたらもっと可愛くなる!」とダイエットさせることを決意しました。

野菜中心のメニューにしてみたり、ゆっくり食べてくれるようにフィーダーを渡してみたり、色々な方法を試してみました。しかし、どれも食欲の権化であるジェシカの前ではあまり意味を成さず、このままでは一緒にいるキュータロウだけが痩せていきそうだったので「もう、運動して痩せてもらうしかないね笑」という結論に至りました。
正直あまり痩せてないと思っていましたが、亡くなった際に計った体重は8.8kgでした。
ちゃんと痩せられてました。毎日見ていると分からないもんですね。ジェシカえらかったね。
食べることが好きなのは周知の事実だったようで、皆さまが毎度美味しい食材を寄附で持ってきてくださいました。ジェシカは毎日ウハウハだったと思います。ありがとうございました。
設置させていただいている献花台にも沢山の食材をお供えしてきただきました。

もうあの感心するほどの食べっぷりを見ることは叶わなくなってしまいました。
天国でたくさん美味しいものを食べてくれてると良いな。
「食べる」というイメージが強いジェシカですが、実はあまり身体が強くありませんでした。特に昔から胃腸系が弱く、天候の変化が激しいときや季節の変わり目などにはお腹を壊して下痢をしたり食欲が下がったりしました。
その都度、食事の内容を調節したり、投薬をしたりして改善してきました。
便の状態を共有するために担当者同士で写真を頻繁に送り合っていたので、テナガザル担当のLINEグループはいつもジェシカのウンチでいっぱいでした。
今回もいつもの胃腸の不調だったらどれだけ良かったか。
最初、食欲が低下した際「またお腹下したか?」ぐらいに軽く捉えていた自分を殴りたいです。
どれだけ後悔してもしきれませんが、先入観を持たずありとあらゆる可能性を考えるべきでした。私は過去の失敗から学ばない大馬鹿野郎です。ジェシカ本当にごめん。
最初ジェシカに会ったときの印象は「クール」でした。あまり感情を表に出さないタイプだと思ってました。
ですが、実際はそんなことなくてキュータロウと取っ組み合いしながはガバガバ笑う姿もたくさん見せてくれました。
私もお近づきになろうと懸命に遊びに誘ったりしましたが、結局最後まで一度も遊んでもらえませんでした。
こっちが関心を向けていないときに服の袖をチョイチョイと引っ張ってきたりするので、「遊ぶか!?」と期待してジェシカの方を向くと「は?」みたいな顔されてました。難しい。ジェシカ攻略は難易度高めでしたね。
ただ、バックヤード担当者からは「急に怒ったりすることあるから気をつけて」と注意されてたのですが、最後まで一度も私は怒られませんでした。それぐらいは信用されてたのかもしれませんね。
感情のまま書いたので、長々と取り留めない文章になってしまいました。
もっといろんなジェシカを知りたかったです。
たくさん食べる姿をもっと見ていたかったです。
もっとキュータロウとの楽しい掛け合いを見ていたかったです。
いまは難しかったかもしれませんが、いつか母親になったあなたを見たかったです。
彼女と過ごしたこの1年は私にとってはかけがえなのない時間でした。
あなたにとって、私たちと過ごした日々は幸せだったでしょうか。
もっとこうしていれば良かった。と後から言っても遅いですが、いまは後悔の念でいっぱいです。
再び単独飼育となってしまったキュータロウのケアも含め、今後も個体の福祉向上に取り組みます。
ジェシカごめんね。
いままで本当にありがとう。
ゆっくり休んで、天国で美味しいものたくさん食べてください。
短い時間でしたが、あなたの飼育担当になれて幸せでした。
最後に
これまで撮影した数あるジェシカの写真のなかから、ベストショットをお届けします。
相方のキュータロウと1枚です。

みなさま、ジェシカを可愛がってくださりありがとうございました。
※本記事は、『【猿分補給】日本モンキーセンターとつながるオンラインサロン』にて、9月18日に一般公開された記事を一部変更を加えて転載したものです。オンラインサロンでは、この他にもサロンメンバー向けの記事を投稿しております。
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