オーライが亡くなりました

バックヤード担当: 藤森

9月17日、カニクイザルのオーライが亡くなりました。死因はがん転移による多臓器不全でした。



オーライはバックヤードのカニクイザルの群れ3群のうち、オスだけの群れでくらしていました。私がバックヤード担当になった2019年にはすでに2位の座にいて、その後も順位をキープしてきた個体です。高齢にもかかわらず、驚くほど元気かつ強気な性格で、いかにオーライの目を盗んで弱い個体にたべものを渡すかと奮闘したものです。

パーティープレートを独占するオーライ


そんなオーライですが、甲子猿でもご紹介しましたとおり、今年の3月から4月にかけて体調を崩して入院し、検査によって腫瘍(がん)が見つかりました。

腫瘍は結腸にできており、腸がほとんど塞がれている状態でした。当時29歳と高齢でしたが、一縷の望みに賭けて摘出手術に臨み、無事に成功しました。

その後も獣医さんからは、「どこまで回復するかはわからない、群れ復帰は難しいだろう」と言われる中、脅威的な回復を見せつけ、なんと群れ復帰まで果たし、私たちを大いに驚かせてくれました。

群れ復帰したときのオーライ

甲子猿では、ここまでの流れを「半端ない」というテーマとともにご紹介しました。ただ、甲子猿では公表しませんでしたが、摘出したがんの周囲にはすでに転移が見られました。とても取り切れる量ではありませんでした。高齢ということ、そして今回摘出したところ以外は明確な症状が出ていなかったことから、残りの時間を少しでも自由に、好きなもの食べたり、群れの仲間たちと過ごしてほしくて群れ復帰という選択肢を選びました。


そして、ちょうどオーライのことをご紹介した試合の翌日、結果発表の日の朝、オーライの食欲が再び落ち始めました。まだ暑かったこともあり、熱中症の可能性もありましたので、体力があるうちにと即入院させました。オーライを連れて飼育棟を離れるとき、群れのメンバーたちの警戒や威嚇の声がいつになく大きかったのがすごく印象に残っております。

検査の結果、やはり前回とは違う複数の箇所で、がんが進行していたことがわかりました。最初のうちは症状を抑える治療をしておりましたが、進行は止められず、痛みをやわらげる緩和ケアに切り替え、オーライがのこりの時間を穏やかに過ごせるようにと注力してきました。

検査のための麻酔から醒めるときに使っていた毛布をとても気に入った様子でしたので、毎日毛布を入れるようにしました。毛布に乗らない日はないというか、毛布から下りる時間はないというくらいずっと毛布を使ってくれていました。洗濯の都合上、ムネアカタマリンのサキ用にご寄付いただいた毛布もしばらく拝借していました。(サキちゃんとご寄附いただいたみなさまに感謝です)

それから、食欲がない日もブルーベリーだけは口あたりが良かったのか、よく食べてくれました。オンラインガイドでそのことをご紹介したら、なんとブルーベリーのご寄附をいただき、すべてオーライのおなかに収まりました。みなさまの支えに感謝感謝です。

その後も体調はゆっくりと、でも着実に落ちていきました。最後の方は固形物はほとんど口にしませんでしたが、液体は受け入れてくれたので、ジュースなどをあげていました。栄養補給できるほどの量は飲めませんでしたが、ほんのりと甘さを感じ、少しでも気持ちが軽くなればいいなと思いながらあげてきました。

オーライが元気だったころは、彼が弱い個体のたべものを取るたび、「ちょっと~!!」と怒っていた私。憎たらしいくらい強気で、どこかライバルのような存在だった彼の変容に、最初のうちは戸惑ってしまいましたが、1日1日を懸命に生きる彼の姿に触れ、私もちゃんと向き合うことができたように思います。

9月12日には30歳の誕生日を迎え、私たちを改めて驚かせてくれましたが、翌9月13日からは横になる時間がぐっと長くなりました。それでも、ジュースや水を飲む時間は体を起こしたり、給水用のシリンジ(注射器)を掴んで飲む意思を示したりと、すさまじい生命力を見せてくれました。

そして9月17日の朝、そっと息を引き取りました。

ここまでがんばってくれて本当にありがとう。

大変な思いをさせてしまってごめんなさい。

どうかどうか、お空の上ではゆっくり休んで、好きなものを好きなだけ食べてね。

そして、これまでオーライのことを心配してくださったみなさま、応援メッセージをくださったみなさま、ご支援いただいたみなさま、モンキーセンターを支えてくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。
みなさんに支えられて、私たちもがんばることができました。

命あるもの、いつかはその終わりを迎えるものですが、それまでの間、彼らが少しでも穏やかにすごせるように、そして彼らの命を持ってして成り立つ動物園として、その使命を果たせるよう、今後も尽力して参ります。