【AC日誌】バーバリーマカクのおんぶ

こんにちは、アフリカセンター担当の廣澤です。

園内が新緑にあふれ、動物たちが新芽のついた枝葉や春の草花をいつも以上に食べる季節になりました。

ニシゴリラのタロウさんも、

タケノコや菜の花も、春を感じますね。

チンパンジーたちも、

植物は、動物に食べられないようにするために苦味のある成分を含むことが多く、私たちが食べると苦くて渋くて全然おいしくないと感じます。ただ、新芽や若葉は、植物が生長するためにコストをさいているため苦味成分が少ないことが多いそうです。
また、葉がやわらかいことも動物たちが好んで食べる理由のような気がします。

もうすぐ国際マカク週間が始まりますが、マカクたちもよく枝葉を食べます。この時期のニホンザルは、野山で若葉三昧なんでしょうね。

もちろん、バーバリーマカクたちも。

バーバリーマカクの群れがアフリカセンターに移動してきて、もうすぐ2年。
先日、初めて確認した行動があったのでご紹介します。

(どなたでもご覧いただけます)

現在群れの調整中で、メンバーが出たり入ったりと落ち着かないため、ビデオカメラで群れのようすを記録していることがあります。それを確認していたところ、

ヨナがウーの背中に乗って移動

メスのヨナが、アルファオスのウーの背中に乗って移動するという場面がありました。

こども(~3才ごろまで)は、おとなの背に乗って移動することは普通にみられることだと思います。
しかし、ヨナは2016年生まれで、まだ若く小柄とはいえ性成熟をむかえたメスです。
この2年飼育を担当していて初めて見たので、驚きました。

この日は、朝から群れメンバーが1頭増え、群れが少し緊張した状態でした。ヨナは、群れの中の順位が中間層。順位の高い個体には挨拶(尻をむけたり、カチカチ歯をならしたり)したりグルーミングをしたりしますが、低い個体には強気にときにしつこくマウントをとる行動をとります。
動画では、画面から見切れていますが右側にいるユン(この日群れに再加入したメス、ヨナより低順位)をにらみ(歌舞伎のみえをきるような動き)、頭上を移動するサムソン(冬に順位が最下位まで落ちた元アルファメス、群れ調整の中心個体で群れに戻れるか調整中)を確認しながら、アルファオスのウーの背中に乗って体をこすりつけています。ウーは背中に乗せつつサムソンのほうを見ながら口をパクパク。
いつもユンやサムソンに対して強気なヨナですが、さらにウーを味方につけるための行動なのか、やや緊張しているための行動なのか、この1回きりでは分かりませんでした。

おんぶをしてもらっていると、一見赤ちゃん返り?と感じますが、ヨナは比較的強気にふるまっていたので、赤ちゃん返りではないと思っています。
ちなみに、おんぶをしてくれているのはオスです。これも違和感があるような気もしますが、バーバリーマカクの社会ではよくあることのようです。

バーバリーマカクではオスが社会的地位をあげるためにこどもの世話をすることや、オス同士がこどもを抱えて(間にはさんで)一緒にカチカチと挨拶をすること(ブリッジング)でオス同士の和解・宥和をおこなうことが知られています。
なので、おとなのオスが小柄なヨナを背中に乗せる行動は、そうした行動の一環なのかなとも思う一方で、今回の場合はヨナのほうから背中に乗りにいっているので、興味深く観察しました。

ヨナもこどものころ、オスたちにお世話してもらったり、群れが緊張状態にあるときにブリッジングで間を取り持っていたのかなとか。

基本的にはオスたちが宥和行動にこどもを利用するという認識があるので、こどものほうから宥和行動を促すことがあるのかどうか(ゴリラみたいに)、緊張したときにオスの背に乗ることがあるのか、気になるところです。

さて、今年の春夏はバーバリーマカクの繁殖が期待されています。9年ぶりのこどもが生まれたら、ブリッジング行動をみることができると思います。
バーバリーマカクの育児や、ブリッジング行動、見てみたいですね。

クー(2015年生まれ、メス)

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