【アジカンInfo】フランソワルトンのヨウについて

みなさんこんにちは。
アジア館を担当しています。浮瀬です。

昨年の8月13日に生まれたヨウ(♂)。

明日7月13日で生後11か月となり、成育状況が落ち着いてきましたので、これまでの経過を改めて詳しくお伝えしたいと思います。

まず【フランソワルトン】とはなんだろう。と思う方もいらっしゃると思いますので、種の紹介をしたいと思います。

フランソワルトンはリーフイーターと言われる葉っぱを主食とするサルです。


ウシやヤギといった反芻動物に似た身体の構造をしており、胃が3つの部屋に分かれています。
その中にいるバクテリアで、葉を分解吸収してエネルギーに変換しています。

新生児期は口にするのは母乳だけですので、葉を消化する胃の構造になっていません。
成長するにつれて胃が大きく発達し、3つに分かれていきます。
どのタイミングで胃の部屋が形成されて、いつバクテリアが胃に入るのかはっきりわかっていなく、研究者も少なく、未だ謎が多い種類のサル。
それが【フランソワルトン】です。

まず、人工哺育に至った経緯を説明したいと思います。
ヨウは2024年8月13日に誕生しました。体重は560グラム。五体満足で元気に生まれてきました。ですが、母親のニィはヨウを抱き上げることはなく、そして攻撃も見られました。
親が育てる気がなかったので、人工哺育をすることになりました。

いちばん最初に説明した通り、フランソワルトンは体の構造がとても特殊です。人工哺育で生かすことはとても難しいとされており、これまで国内でのフランソワルトンの人工哺育の成功例はありませんでした。

参考にできる資料はほとんどなく、海外の色々な文献を読み、他園館からいただいた他のリーフイーターの人工哺育の資料を参考にしたりして、手探りで人工哺育をしてきました。

モンキーセンターではヨウの前に2023年にもフランソワルトンの仔(レン♂)が誕生しています。レンも人工哺育でしたが、残念ながら生後23日で、少し目を離した2時間後に急性の腸炎で亡くなりました。
何が原因で腸炎が引き起こされ死に至ったのかは、解剖結果からもわかりませんでした。

レンの死を無駄にしないように反省点や改善点を考え、まずはヨウを生かすことを第一目標にチーム一丸となり頑張ってきました。

生後11ヶ月になりますが、その間に今回のブログでは書ききれない、伝え切れないほど、いろんなことが起き、何度も何度も生死を彷徨ってきました。
(このお話は、またどこかのタイミングで伝えれたらいいなと思います。)
どうにかいろんなことを乗り越えて、今まできました。

今では親と同じ食べ物のサツマイモ、バナナ、リンゴ、ニンジンなど固形物をモリモリ食べれるようになりました。

それだけではありません。リーフイーターらしく枝葉も自ら欲するようになりました。

今は天気のいい日は午前と午後に短時間ですが、運動場や寝室に慣らすトレーニングをおこなっています。
なので偶然にもヨウを見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
段階を踏んで、いちばん最初は我々飼育員も付き添って場所に慣らしていき、少しして1頭で過ごしてもらうように慣らしていきました。

まぁ、心細くてギャーギャー鳴いていました。

あまりにも鳴くので心配にはなりましたが、そこは今後のヨウのことを考えて、グッと堪えて影から見守ってきました。

ここ最近はこの通り。1頭でも鳴かずに落ち着いて過ごせるようになってきました。
少しずつヨウのペースで成長しています。

とても順調そうに見えるかと思いますが、母親の元で育った個体よりも、発育が遅れているように感じられ、まだまだ体力的にも精神的にも未熟なところがあります。

あまりハードに進めると体調を崩すことが多く、今でも一進一退を繰り返しています。
なかなか思うようにいかないのがリーフイーターの人工哺育だと常々痛感しています。

11ヶ月経ちますがまだオレンジ色の幼児色が残っています。2月から体重の伸びが悪いのが続いています。まだまだ道のりは長そうです。

早いところ飼育員の手から離れて、できれば両親と一緒にくらせるようになり、その姿をみなさんにお見せできることを目標に
明日からもヨウのペースで一歩一歩前に進んで行きたいと思います。

今後も進展報告をしていきたいと思っていますので、応援のほどよろしくお願いします。

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