【AC日誌】サモハン波紋をおこす

アフリカセンター担当の廣澤です。

バーバリーマカクのサモハンをご存知でしょうか?


2024年の甲子猿イベントで、『波紋をおこす?』をテーマにサモハンのことを紹介をしました。
覚えてないな、まだ知らないなという方は、ぜひこちらの動画の14:00~16:00をご覧ください。

2024年甲子猿

2024年夏までのサモハンは、群れの中で順位の低いオス。
甲子猿でもお伝えしたように、サモハンが群れの中で『波紋をおこす』=群れを騒がすようなビッグな存在になるのは難しいだろうと考えていたのです。ですが!!

この1年で、新たなサモハンの一面を見ることができたので、ご紹介したいと思います。

新たなサモハン 其の一

2024年冬、メスたちが発情をむかえる季節。順位の高いオスが優先的にメスと交尾をする機会が得られるのが一般的ですが、バーバリーマカクたちはメスからオスに交尾を誘いかけることもしばしばあります。そんな中、意外にもサモハンがメスに人気! 高順位のオスから見えないところでサモハンはモテモテでした。

新たなサモハン 其の二

そうこうするうち、メスと交尾することでサモハンに自信がついたのか、群れのアルファ(第1位)オスのウーが弱くなってしまったのか、サモハンがウーに向かって反発するようすが頻繁にみられるようになりました。
サモハンは、1対1ではウーにしかけにいくことはないですが、第2位オスのキンがウーに反発するときに一緒になってウーを追ったり、またウーとの間にわだかまりを感じたときなどにキンに助けを求めることが増えていました。とくに、キンに助けをもとめ、自分はキンの後ろで騒ぐだけ騒いで、実際にはキンにウーを追わせるような、策士のような姿をみることが多かったです。自分より順位の高いキンを、手のひらの上で転がしてるなぁと思ったものでした。

第1位ウーと第2位キンは、そこまで衝突が多くなく、以前は一緒に第3,4位オスを追いつめるような、協力関係にある気がしていたのですが、2025年1月ごろではサモハンの行動によって2個体の関係性が崩れてきているようにも思えました。

それまでウーが第1位オスかつ群れの最優位個体、そしてウーの母サムソンがメスの第1位個体だったのですが、このころサムソンが群れのメスたちの中で順位を落としてしまい、ウーには強力な後ろ盾がいなくなったのも、サモハンが強気にでるようになった一因なのではないかと思います。

まだこのころは、サモハンってトラブルメーカーかなと思っていました。

新たなサモハン 其の三

2025年春、バーバリーマカクの群れが荒れに荒れ、収拾がつかなくなってしまったので、
攻撃をしかける個体を群れから一時的に分けたりしながら、攻撃されやすい個体を群れに馴染ませたりする期間をもうけ群れを調整していきました。サモハンは、群れから4か月ちかく離し、最後に群れに戻すことになりました。

久しぶりにサモハンを群れに戻す前に、オスのウーやキンとは1対1での見合いや同居をおこない、関係を確認しました。そのときのようすがこちら。

なんと、積極的。以前は、優位なオスに接近するのは、危険を察知して挨拶にいくときくらいだったのに、自分からグイグイいくサモハン。そして挨拶せず距離をつめたり、ディスプレイをしたり。とても挑戦的なふるまいにびっくりしました。そして、ウーはそんなサモハンに面食らってしまい、キンは無視して動じない(もしくは動じていないふり)ようすでした。
サモハンは、単なるトラブルメーカーではなく、群れの中での自分の順位をあげようと向上心の塊になっていました。キンに対しても挑戦的だったのですから。

その後のサモハン
ウーやキンに対して強気にふるまうサモハン。いよいよサモハンの時代到来か!?

つづいて、ウー、キン、サモハンの3個体で関係性をみることにしました。
一緒になるやいなや、ウーとキンがタッグを組み、サモハンを圧倒してしまいました。
サモハンは負けを認めたようすで、それ以降ウーとキンに対して強気な態度をとることはなく、
2025年夏、以前のように低順位のオスとして群れに戻ることができました。

ようやく群れのメンバーがまた一緒に過ごせるようになって、スタッフも安堵しました。

ところがこの10月、メスの発情シーズンが来ると
またサモハンが強くなってきました。サモハンがキンのようすをちらちらうかがいながら、ウーに物申すことが多くなり、明らかにウーがサモハンを避けている・・・。さらにはサモハンがウーの見ている傍でメスと交尾してもウーは何もいわず。
サモハンは確実に地位が高くなってきています。

現在のオスたちの順位は、総合的にみるとキンが第1位で、ウーとサモハンが第2位争いのような構図です。キンがウーの味方をしすぎることなく、サモハンの味方をしすぎることもなく、といった具合で、よいバランサーとなっている気がします。たぶん、サモハンの味方をしてサモハンが強くなりすぎると、キン自身もいずれサモハンに順位が負けてしまう可能性がありますので、そうしたことも影響しているのかな、なんて思ったり。皆、策があるのか、そこまで考えているかいないか分からないですが、
そうしたことを考えながら、日々バーバリーマカクの群れを観察しています。
本当に興味深いです。今後もまだまだ変化があると思います。

それでは、また!