アジア館を担当しています、浮瀬です。
チームヨウちゃんを代表してブログを書かせていただきます。
フランソワルトンのヨウが1月9日の朝8時に私の腕の中で亡くなりました。死因は胃拡張による循環不全でした。

胃拡張が引き起きた原因は分かっておらず、解剖時に採取した組織からなにか分かることがないかを研究者とともに現在究明中です。
ヨウは2024年8月13日に、排水の側溝に産み落とされていたところを見つけました。
一生懸命産声をあげていましたが、母親は拾いに行く素振りが全くありませんでした。
一旦保護し身体を保温、獣医による身体検査をした後、再度親元に戻す取り組みをしました。


ですが、次第に母親はヨウの泣き声に苛立ちを感じるようになり、手が出るといった攻撃が見られたため親元に戻すことは危険であると判断し、ヨウの命を守り、繋げるために人工哺育をすることになりました。
フランソワルトンの消化器官はヤギやキリンといった葉っぱが主食の反芻動物に似ている構造をしています。(反芻動物は胃が4つですが、フランソワルトンは3つ)
そのため、胃や腸の発育が単胃動物とは異なるため、人工哺育になってしまった場合、成長過程で不具合が起き、国内では生まれてまもなくで亡くなっており、生きた事例がありません。
ヨウのお兄ちゃんにあたる、レンという個体を人工哺育した際も生後2週間を境に、原因不明のミルクの吐き戻しが増え、生後23日で急死しました。

ヨウを人工哺育で育てると決めた時、レンの時にしてあげられなかったことや悔やんだことをを一生懸命やろう。ルトンの人工哺育はとても難しい、甘くみてはいけない。なにを言われようと、どんな時でもヨウに寄り添い、どんなに大変なことが起きても臆せず、いろんな対応方法を考えて乗り越えよう。絶対に生かそう。そう心に決めました。
生後2週間までは何事もなく、元気に過ごしていてこのままスクスク育つ気がする雰囲気がありましたが、やはり彼はフランソワルトンでした。

生後3週目から理由や原因がわからない多事多難な出来事がたくさん起き始め、何度も何度も生死を彷徨うような出来事がありました。
急に腹腔内にガスが溜まり大変な手術をうけたり、ミルクを飲んだら吐くを繰り返したり。白濁し、臭いのある下痢便がひたすら出るといった状況が長く続きました。
↓腹腔にガスが溜まった時です。

腹腔のガスを抜く大きな処置をした後のヨウです。処置の邪魔になるのでオレンジの毛は少し刈られてお腹が見えています。
こんな小さな身体で頑張って耐えてくれました。

↓ガスを抜いた後の小さくなったお腹。

寝るにもしんどくて、目が半目で起き上がることができない。そんな日が続きました。

それから、ミルクが合わないだけでなく、ミルクをいらないと拒絶されるようになりました。ミルクでしか成長しない時期のミルクの拒否は”死ぬしかない”状況でした。
とっさの思いつきで、ミルクに葉野菜や果物を混ぜてスムージーにして与えることにしました。どうにか飲んでほしい。そんな気持ちでシリンジを口元に持っていったら、少しずつ飲んでくれました。

ヨウは頑張って生きようとしていました。
こんなに小さな身体で生きようと頑張っている姿をみて、私たちが諦めてどうするんだ。絶対死なせてはいけないと、ヨウがいつも現場を奮い立たせてくれました。

それからも説明ができない、説明がつかないほどの、原因がわからない体調不良が幾度も幾度ヨウを襲いましたが、何度も何度も乗り越えてくれました。
↓原因不明の体調不良。
私たちにやれることは、合っているのか間違っているのかはわからないけれど、なにかしらの対応をして、あとは何か起きた時にすぐに対応できるためと、ヨウの精神的な安定をはかるために常に寄り添っていました。

お正月は迎えられないだろうと誰もが思うほど不安定な日が続く中、どうにか1回目のお正月を迎えれたこと。
そして、すこし体調が安定してきた春くらいから展示する練習を進めて、夏前くらいから皆さんの前で展示ができるようになりました。
↓展示の練習中

↓疲れるとハンモックの上でお昼寝。(安心できる毛布とリュックを近くに置いて)

そして8月13日には1歳のお誕生日を迎えることができました。そして、固形物もこんなにモリモリ食べられるようになりました。

そして、名前のヨウは葉っぱの葉からきています。葉っぱが食べれるようになるまで大きくなれますように。そんな願いを込めてです。
名前の通り、こんなに木の葉も食べれるように。大好物はトウネズミモチでした。

8月の終わりにはモンキーセンターでのビッグイベントの甲子猿にもアジア館のメンバーとして出場ができ、缶バッチにもなりました。
少し涼しくなった秋は、1日展示ができるようになりました。

全ての出来事がヨウの状況的に難しいと思っていたので、本当にヨウは頑張った。その言葉につきます。
1歳5ヶ月の人生と聞くと、とても短く、無念だと感じると思います。
でも、フランソワルトンの人工哺育では、ヨウはとてつもなく頑張って頑張って駆け抜けた1歳5ヶ月でした。

ヨウの今回の事例はフランソワルトンの飼育や繁殖の確立への一歩として貢献しただけでなく、いろんなことを我々飼育員に、そしてみなさんに教えてくれたと思っています。
ヨウちゃん、素晴らしい命の物語を教えてくれてありがとう。
今後は、ヨウの命が無駄にならないように、死因の解明であったり、哺育データをまとめてヨウの生きた軌跡、事例を次世代に繋げていく取り組みを頑張っていきます。

みなさまには、これまでたくさんの応援メッセージをいただきました。1人1人の方にきちんとお返事がしたいくらい、心の励みになっておりました。
そしてなによりも、ヨウのことをたくさん愛していただき、成長を優しく見守ってくださり、本当にありがとうございました。
