【今月アヌビスヒヒ推し】本の紹介「人とヒヒはどこまで同じか」

打越

「私に言わせれば、平和の象徴はハトではなく、ヒヒの毛づくろいである。」

   アヌビスヒヒをケニアで長年研究されてきたストラムさんの書かれた本からの1文です。

この本は1987年に英語で出版され、89年に榎本知郎さんによって日本語に訳され、どうぶつ社より出されています。今から30年前のものです。最近になって読みました。深みのある言葉がびっしりとつまっていました。

学生時代に読んだのに記憶に残らなかったのか、あるいは、読んでいなかったのか。後者ではと思っていますが、当時、アヌビスヒヒをおそらく観たことがなかったので、仮に読んでいても、心に入って来なかったのかもしれません。多少の経験をしてはじめて、なるほど、となることがありますよね。

ソラ♂2016.01.11撮影

「”すべての霊長類は、社会的に生まれる”ということは、私が学んだウォッシュバーン先生の授業では、自明の理として説明された。しかし、私がその真の意味を理解したのは、ペギーと彼女の一家を観察してからだった。」

「ヒヒの保護者であることは、ときにはヒヒの敵のような活動をすることにもなる。」

他の研究者との関係での葛藤、ヒヒと農家との難しい関係、保全活動、そのほか。研究成果だけでなく、背景もたっぷりと書かれています。

「飼育の部屋」の全個体紹介を楽しんでいただいて、身近に感じていただけたら、さらに読書はいかがでしょうか?アヌビスヒヒの世界に旅立ちましょう。

 

〇和訳  「人とヒヒはどこまで同じか」シャーリー・C・ストラム著 榎本知郎訳(1989)どうぶつ社.東京.

〇原著   Almost Human – A journey into the world of baboons. Shirley C. Strum (1987) Random House, New York.